興味深いネットの記事が目に留まりました。あるタレントさんが定食屋さんに入った際、「唐揚げメンチカツ定食」の唐揚げのみを食べたいがゆえ、メンチカツを外してほしいと店員さんお願いしたけど、聞き入れてもらえなかったことに対して不満を述べたというもの。
えーと。お店さんの気持ちがちょっとわかります。お店としては、いかなるオリジナル対応、イレギュラーの対応もできないし、したくないんですよね。「一品抜くだけでしょ」とか「融通が利かない」とか、そういう問題じゃない。通常の運用を乱す対応は、見た目の足し引きにかかわらず、原価範囲外となるのです。
客としてどうしてもオリジナルの対応をしてもらいたければ、多少高くても、アラカルトができるお店に行けばいいのです。それが難しいときは? イレギュラーを頼んでみて、「できます」と言われれば客としてはもうけものでしょう。けれど「できない」と言われたら、素直に引き下がったほうがいいです。
商売する側としては、メニューを「そのまま」頼んでくれる客がいちばんいい客です。だからこその「定食」なのです。定まった食が嫌なら単品で頼むか、自分の望む対応をしてくれるお店さんを選べばいい。通常の価格範囲内で無体な要求を押し通そうとするのは、フリーライドすることと一緒です。
おもてなし、ホスピタリティが声高に言われている昨今、それはそれで素晴らしい。けれどそれは店側が「客のわがままをなんでも聞いてくれる」という意味ではないはず。客側はそこをはき違えないで利用するのがスマートかと。
三谷幸喜さん脚本の連続ドラマ『王様のレストラン』(1995年・フジテレビ)の第1話、伝説のギャルソンを演じた九代目松本幸四郎さん(当時)が横暴な客に向かってこう言い放つセリフがありました。
「お客様は王様です。しかし、首をはねられた王様もいます」
店を選ぶのは客ですが、店にも客を選ぶ権利があるのです。ここ見落とされがちですが……。もちろんたいていの飲食店はそんなことを口にしませんし、客のほうにへりくだれと言っているわけではありません。が、客側として常々こういうことを頭のどこか片隅に置きつつ、気持ちよくいただきたいものです。
この辺については夜のBAR訪問についても言えることで。いずれきちんと言及したいと思います。