鈴本演芸場の4月下席夜の部。トリは春風亭一之輔さんです。演目は「子別れ」でした。別れた夫婦が息子のおかげで元サヤに納まるストーリー。「子は夫婦の鎹(かすがい)」で知られる噺ですね。
「子別れ」が長めの噺のせいか、まくらは短めでした。「(寄席で主任を務める)10日あるうちの1日だけ来ればいいだろうってもんじゃないですからね」と笑わせつつ、「明日も来てください」と呼びかけていました。大人気の一之輔さんがトリなのに、夜の回は意外なほどの空席が。285席もある鈴本ゆえでしょうけど、ちょっともったいないですね。
この日、僕は勤務を終えてすぐさま直行。のだゆきさん(ピアニカ・リコーダー漫談)、橘家文蔵さん(演目は「夏泥」)、紙切りの林家正楽さんだけ見られました。今年は平日の昼間に寄席に足を運ぶことを目標にしていますが、夜の回もなんとか来てみよう。仕事早く終わらせて。
この「子別れ」、一之輔さんは相当お好きであり、また得意でもあるのでしょう。自らのCDに収録していますし、独演会でも多く出しています。実際、大工の父・熊五郎と九つになる息子・亀吉の演じ分けが一之輔さんは見事。熊五郎が亀吉に語りかけるときは斜め右下を見て、亀吉が熊五郎に話すときには左上を仰ぎ見る。駄々をこねたり、弱虫だったり、ちょっとおませだったり。亀吉のキャラがとってもかわいらしい。あれ買ってこれ買ってと父親にせがむ息子が出てくる「初天神」も、そういえば一之輔さんは大得意でした。
本当に子どもが喋っているように見える、その風景が自然に見えてくるんですよね。これは一之輔さんが実生活でもパパであることが大きいのかもしれません(まくらでお子さんのことをたびたび話されますし)。それにしても一之輔さんに笑わせてもらおうと来たのに、「子別れ」とは。ホロっとしてしまいました。んーー、いろんな噺家さんの人情噺に遭遇することが多いのは神様のいたずらか。