上手いベテランで、ストレートな古典落語を聴きたい。
実際、聴いているだけで気分が落ち着く、涼が訪れるような会でした。
トーク「夏」 雲助 扇遊
子ほめ わたし
夏の医者 扇遊
臆病源兵衛 雲助
仲入り
辰巳の辻占 雲助
佃祭 扇遊
2024年8月15日 18時45分開演
日本橋社会教育会館
開演で緞帳が開くと、マイクを挟んで高座左に扇遊さん、右に雲助さんが斜め向かい合わせにお辞儀していてビックリ。
お二方のトークから開始とは意外でした。
扇遊さんが進行役を務める形で、先輩である雲助さんに話題を振りながら20分ほど。
雲助さんの多彩な趣味(シュノーケリング、トライク)、酒・晩酌談義、健康や体調管理など縦横に。
酒での「しくじり」はないという雲助さんに対し、扇遊さんが若かった時分に志ん朝さんをしくじった思い出など。
あまりの暑さにくたびれ気味な雲助さんを、ふだんは面を向かって言えないと「いつまでもお元気」で労わる扇遊さん。
雲助さんも扇遊さんも、大らかで包容力があって優しいんですよね。
落語の芸もさることながら、その魅力に気づかされました。
入船亭扇遊「夏の医者」
大蛇(うわばみ)が登場する不思議な噺。
無医村で倒れた親を助けるべく、何里も歩いて隣村の医者に往診を依頼する息子。事情を聞いた医者はすぐさま出立するも、山を越えるルートの近道で先を急いでいると、にわかに辺りが暗くなり、2人はうわばみに飲み込まれたと気づく。
医者は咄嗟に薬箱にあった下剤をうわばみの腹にまき、命からがら2人は肛門から脱出。家にたどり着いた2人だが、医者は薬箱をうわばみの体内に置き忘れたことに気づく。
「茄子娘」などもそうですが、怪談とは異なる趣の古典ファンタジーっていいな。
五街道雲助「臆病源兵衛」
極度の怖がりで、根がスケベな源兵衛さんをからかって酒の肴にしようとする男ふたり。
幽霊に扮して脅かしてきた八五郎を、源兵衛は返り討ちにした挙げ句、不忍池にその死体を捨ててしまう。
だが八五郎は実は生きていて……。
不忍池近辺、根津などが出てくるあたり、そのロケーションを知っている下町暮らしの身には想像力が膨らむ楽しい噺。
五街道雲助「辰巳の辻占」
寄席でも聴いた雲助さんによる小品。花魁と相思相愛を主張する男が、花魁の本気度を試すためにニセの心中話を持ちかける。
2人の男女が互いに大川に身投げしようと様子を探り合うやり取りが可笑しい。夏だなぁ。
入船亭扇遊「佃祭」
困っている人を助けるのが江戸っ子。小間物屋の旦那が積んだ善行(吾妻橋から身投げしようとした女を助け、五両を授ける)をマネようとした与太郎。
歯痛のまくらからの出だし、サゲに至る伏線回収がナチュラルで心地いい。
ベテランお二方にまかせて安心な古典。じっくり落ち着いて聴けた、いい時間でした。