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メタ認知と引き際の美学。

東京国立近代美術館

田村正和さんが「引退宣言」したという、FRIDAYの記事を読みました。

むかし、三谷幸喜脚本の連続ドラマ『古畑任三郎』(フジテレビ)放送時の合同取材会で、正和さん本人に話を聞いたことがあります。収録が行われているスタジオ内の会議室で行われた取材会。取材陣は20人くらいだったかなぁ。仕立てがいいと一目でわかるジャケットとパンツ姿で現れ、「ダンディーだー。なんで写真撮影をNGにするのか全く分からん」と内心で叫んでしまった若輩者でした。

「三谷さんの舞台はご覧になりましたか、もしご覧になっていればその作品と感想を教えてください」という若輩者の質問に対し、斉藤由貴さん主演の『君となら』を挙げた正和さん。「あれは面白かったですねえぇーーー」と、あのちょっとしわがれた声で楽しそうに話してくれたのを、今でもよく覚えています。

『古畑任三郎』というドラマは、三谷幸喜という脚本家の名を一躍知らしめた作品だと思います。そして正和さんにとってもこのドラマはチャレンジだったらしく、『古畑任三郎』と『うちの子にかぎって…』(TBS)の2つのドラマには本当に感謝している、と述懐していました。

上の記事にもある通り、正和さんは最新作の本編ラッシュを見ただけで、「もうアカンな」と思ってしまった。セルフイメージを非常に大切にしていて、なおかつ冷徹にメタ認知もできる。自分が納得できないなら出ないほうがいいと悟ったのでしょう。

自分の見せ方と、与えられている役割や望まれている役柄。ファンや観客が満足であったとしても、作品の出来栄えやモニターに映る自分自身の姿に自分が満足できないとなると、この決断は仕方ないのかもしれません。本当にすごい潔さ。誰にでもできることじゃないです。

自分は若々しい、魅力的に映るはずだ。今の時代、こう考える男性(特に中高年)は多いでしょう。セクハラのトラブルが後を絶たない一因です。他人から見た自分を正確に評価できない(自信過剰な)わけだから。多くの女性を虜にした「甘いマスクに甘い声」の代名詞的存在である正和さんは、やっぱりプロです。自分に相当厳しいし、またファンをがっかりさせたくないという強い意志を感じます。

中高年は「枯れ」を意識する必要はないけど、いたずらに若さ是一辺倒の風潮はどうかと思う。僕は生涯現役を目指しているけど、それは若さを保つという意味と必ずしも同義ではありません。加齢を受け入れ、譲るところは譲る。若ぶっている、張り合っている時点で見苦しい。若い人にトシで勝てっこないんだから。

それにしても正和さん、本当にかっこいいね。生涯現役と美しい引き際の両天秤。今はまだ難しいけど、自分がそういう老齢な境地になったときに、芯がどれくらいあるだろうか。いい爺になろう。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性