上野鈴本演芸場10月上席夜の部は、珍しく変則的なトリの回り持ちです。前半5日間を柳家小三治さん、以降を春風亭一之輔さん、桃月庵白酒さん、柳家権太楼さん、柳家花緑さんがトリを務めます。
三遊亭ごはんつぶ「子ほめ」
入船亭遊京「権助魚」
鏡味仙三郎社中「太神楽曲芸」
柳亭こみち「四段目」
春風亭一朝「目黒の秋刀魚」
ホンキートンク「漫才」
古今亭菊之丞「町内の若い衆」
柳家はん治「粗忽長屋」
仲入り
林家楽一「紙切り」
柳家小ゑん「吉田課長」
柳家小菊「粋曲」
桃月庵白酒「幾代餅」
この日7日のトリは桃月庵白酒さん。「国宝の代演、ありがたいことです」と言いつつ、疾走感あふれる「幾代餅」をかけてくれました。これを白酒さんで聞くのは今年3回目。
「幾代餅」は今でいう精米店の奉公人が、幾代という太夫を身請けして餅屋を開き、大繁盛させるまでの話。最初、2月の独演会で見たときには、人情噺的な要素も多分にある「幾代餅」を白酒さんが選んだのが意外に感じたほど。白酒さん、人情噺を自ら積極的にはかけない人です。
恋わずらいでメシも喉を通らない奉公人に大笑いする主人と奥方、遊郭に行けると分かりキリッとなったり、かと思えば弱気になったりの奉公人の二面性をデフォルメしたり。2月に見たときと比べると、さらにノリノリ、随所をブラッシュアップしているのが分かります。
もうひとつ。まくらで「勘違い」の話をされたのも面白かった。楽屋にいる師匠方の勘違い、お客さんの勘違い。なんなら勘違いしたままのほうが幸せなこともある、勘違いからくる出会いもある。そういう話からの江戸の恋バナ「幾代餅」、めいっぱい笑わせてもらいました。