上野鈴本演芸場令和三年八月下席昼の部・千秋楽(2021年8月29日)に行ってきました。
鈴本で柳亭こみちさん主任興行を見るのは2回目かな。
とにかく上手い人です、こみちさん。
(途中から)敬称略
狸賽 甚語楼
仲入り
マジック 美智・美登
フィッ! 小ゑん
悋気の独楽 正朝
粋曲 小菊
不動坊 こみち
ヒザ前に上がった春風亭正朝さんが、まくらで
<焼きもちは遠火に焼けよ 焼く人の胸も焦がさず味わいもよし>
という文句を引き合いに出し、焼きもちはうまい具合に焼けないもので、気がつけば嫉妬のあまり自分を真っ黒に焼いちゃう……という入口から「悋気の独楽」を。
おぉ、これ少し前に、こみちさんで聴いた噺。
……と思いきや、こみちさん、実は楽日にまさにこの噺をやろうとしたとかで、「寄席はヒザ前の師匠が何をやるかまで決められないんですよ」と苦笑気味。
悋気と付いてしまう噺をやりたいけどどうか、と客席をうかがいつつ、かかったのは「不動坊」。
講釈師・不動坊火焔の後家さんを女房にもらえと、世話焼きのおばさんが色男の吉さんにキューピッドを買って出る。
面白くないのが吉さんファンの女子コンビ。
彼女らは売れない落語家を不動坊の幽霊に仕立て、吉さんと後家さんが仲睦まじくする長屋に忍び込み、ニセの幽霊で二人を脅かして別れさせようとするが……。
あれれ、「不動坊」ってこんな噺だったっけ? と思い、検索してみて分かりました。
本来の古典は器量の良い女とくっつく男に嫉妬した男たちの悪だくみの噺ですが、こみちさんは女性版にアレンジ。
この二人組の喋り方がキャピキャピ、こみちさんは一昔前のアイドルっぽく演じていて、それもまた愉快。
野郎の嫉妬を女の嫉妬に変えた自在さ、さりげなく今っぽさを取り入れているのがすてきでした。