毎年恒例、一之輔さんの全国ツアー2024年の千秋楽。
最終日でドッカンドッカン笑わせるかと思いきや、期待の裏をかきたいものなのか。
締めの演目は、まさかの『心眼』でした。
トーク 春風亭一之輔
しびん 春風亭与いち
笠碁 春風亭一之輔
仲入り
心眼 春風亭一之輔
2024年11月16日18時開演 有楽町よみうりホール
手堅い古典『笠碁』も見事に改変する一之輔さん
待ったなしで碁を打とうと決めた旧友の老男ふたり。だが、言い出しっぺのほうが序盤で早くも待ったする。
ここで押し問答が始まり、仲違いからの仲直りに至る過程が聴きどころです。
本作により説得力とオリジナリティを持たせるべく、アレンジを加えているのが一之輔さん流。互いのヘボさを罵るケンカからだんだん恩着せがましい昔話に至るのが笑いどころですが、一之輔さんは公園で雨中に待ちぼうけを食らったエピソードを加えます。
雨の中を碁敵の宅に訪ねて再戦に至るクライマックス、一之輔さんは「忘れた煙草を取りに来た」旨の台詞を加え、もっともらしい建前を取り繕わせます。
そして公園のエピソードを回収するサゲ。一之輔さんは客がどうこうよりも、自分が違和感なく話せるか否かで改変している気がするんですよね。
まさかの『心眼』
按摩の梅喜が願掛け100日の甲斐あって開眼するも、糟糠の妻を捨てて芸者に浮気。ふたりの密会の現場に乗り込んだ妻は、薄情な梅喜の首を絞め……。
有名な噺ですが、夢オチがなんとも。中年男よりも中年ミセスの琴線に触れそうなストーリーです。
締めくくりであえて笑わせない演目をチョイスした一之輔さん、もはや枯淡の域と言ったら言いすぎでしょうか。
オープニングトークはパーカーネタで
ドッサりツアーではオリジナルの物販が展開されていて、この日のオープニングトークでは一之輔さん自らフード姿で登場。客席1列目に座るパーカーを着たお客さん2人を舞台前に連れ出してトークに巻き込む場面が。
ワシも上手の1列目に座っていたので、一之輔さんがこちらを見留めて来かけたときにはドキッとしました。パーカー着てなかったから、すぐに踵を返されましたが一瞬焦ったわw
与いちさんの『しびん』
田舎者の侍が国元への土産を求めに道具屋へ。そこで見つけた尿瓶を焼き物と勘違いした侍は、道具屋の主人の制止も聞かず買い求めてしまい……。
後で尿瓶を高値で買わされたと知った侍は、道具屋に取って返す。クライマックス、猛然と駆け込んできた侍と、とっさに機転を利かせた道具屋とのやり取りが聴きどころ。
侍は国元の屋敷に出入りする本屋に、尿瓶と聞かされて初めて気づくのですが。与いちさんは、侍が尿瓶を五両で買い求めたと本屋に打ち明けるくだりを省いたのに、本屋が「五両とは法外」と話したのには驚き。
聞いてるワシが一瞬混乱しましたぜ。どんなテレパシーよ。
んー、芸風が師匠である一之輔さんに似るのは当然として、やや雑かなぁ。もう少しがんばって。
こちらは劣化版の一之輔さんを観にきたつもりはないので。