今年2018年、初の2日連続開催となる「ウイスキーフェスティバル2018in東京」に来ました。今年は座学中心にして、未開拓・未知の分野を勉強することに。というわけで、1日目の初っ端、アイリッシュウイスキー「ランベイ」(LAMBAY)のセミナーに参加しました。
講師はカミュ社ワイン&スピリッツ カントリーマネジャーの鈴木更紗さん。「ランベイ」(LAMBAY)はコニャックで有名なカミュが手掛けるアイリッシュウイスキーで、自分では蒸留所を持たず、委託蒸留と熟成を行っているブランドだそう。コニャック(フランス)とアイリッシュウイスキー(アイルランド)、このアンマッチ感が面白そうじゃないですか。ローンチしたのは今年2月、日本上陸は7月。まだ生まれたてのブランドです。
ウイスキー市場は花盛り、最も歴史あるアイリッシュウイスキーも例外なく伸びていますが、ウイスキー全体の中でのマーケットシェアは4%と意外に少ないんですよね。2010年にはブッシュミルズ、ジェムソン、キルベガンの3か所しかなかったアイルランドの蒸留所ですが、そこからL字回復。2018年は12か所、2020年までに28か所もの蒸留所が稼働開始予定とかで、いやはやすさまじい勢いです。
「ランベイ」とはアイルランドの首都ダブリンの沖合2,4kmに浮かぶ島の名前で、1904年から個人所有(一般公開していない)の無人島なんだそう。カミュの5代目当主のシェリル・カミュさんと島の持ち主アレキサンダー・ベアリング卿という、強い財力を持った侯爵(ベアリング家はアイルランドで一番最初に銀行を興した一族)がお友達だったところから、企画がスタート。
島の自然を壊さずにランベイの名を世界に知らしめ、環境を守るための資金を得ることができるプロジェクトがないか。シェリルさんが島でコニャック造り(フランスのレ島産「イル・ド・レ」など)をしていたため、島で原酒を熟成させたら面白そうだというのが着想の発端とか。
実際、ランベイ島は珍鳥パフィンや有袋類のワラビーなどさまざまな野生動物が住む自然豊かな土地。夏場は気温16~20℃、冬場は5~6℃と暑すぎず寒すぎずの気候。火山性の岩盤によってろ過された井戸水(トリニティ・ウェル・ウォーター)を原酒に加水することで、個性を出しているそう。
そんな自然ゆえ、環境に負担を与える蒸留所は建てられず、熟成はウエストコーク蒸留所で、カミュのマスターディスティラーのレシピによって蒸留するやり方。その後バーボンカスクで2年熟成。シングルモルトになる樽はカミュから、原酒はウエストコークから船でランベイ島に到着。フィニッシュ(約6カ月前後)を島で行います。
そのランベイ、「3回蒸留」「コニャック樽のフィニッシュ」「クラフト・アイリッシュウイスキー」といったキーワードで語れそう。
今回のセミナーはランベイ2種とコニャック2種を飲み比べるという、ユニークな企画でした。
写真、グラスにランベイの名前が刻んである手前左が「スモールバッチブレンド」、右が「シングルモルト」、左上がカミュのコニャック「VSOPエレガンス」、右上が「イル・ド・レ」です。
「スモールバッチブレンド」は3回蒸留、バーボン樽3年熟成(ウエストコーク)。比率は70%がグレーン、30%がモルト。カミュ社のコニャック樽で1カ月程度フィニッシュ。非常に飲みやすく、個性控えめ。僕の舌では華やかで甘いコニャックの特徴はさほど捉えられず、もう少しじっくり飲みたいと思いました。単体で飲むよりカクテルやソーダ割などで飲むのがいいかも。
アンピーテッドの「シングルモルト」は、ウエストコーク蒸留所で1stフィルのバーボン樽5年熟成。その後ランベイ島のセラーで約6カ月フィニッシュ(もちろんカミュのコニャック樽)。島のカスクルームに入れられるのは24樽くらいで、その熟成庫は海側に穴が空いているとか。
酒質への実際の影響は不明ですが、樽が海風に当てられている想像をするだけで愉しいものがあります。
テイスティングしたところ、意外にもホットで個性的。北のイメージより南に近い印象でした。香りはけっこう主張があって、若いバナナ、ふんわりバニラウエハース。若さゆえの薬品っぽさや島っぽさもあります。際立っている個性です。
この後にコニャックを飲むと。当たり前ですが甘さが加速します。カミュの「VSOPエレガンス」はコニャックのスタンダードですが、どんな飲み方でも行ける応用性だけでなく、費用対効果面でもバッチリで良いです。「イル・ド・レ」は料理と合わせるとより良さそう。
その後シングルモルトに戻ると……。んー、やっぱり飲みやすい。けれどもその後、飲み比べてみると意外にも「スモールバッチブレンド」が良い感じ。
ランベイ、復活ののろし高らかなアイリッシュウイスキーの中でも、そしてクラフトウイスキーというカテゴリの中でも今後が楽しみな銘柄です。