先日、面白いウイスキーを飲む機会がありました。「M&H」という、イスラエル産のシングルモルトです。バックバーに牛さんとミツバチさんが混じったような、かわいいブランドマークのボトルを見つけ、声をかけてみました。なんでもお店(LEAP BAR)の常連さんのおみやげだそうで、どうもありがとうございます。
M&Hとは「ミルク&ハニー」の頭文字で、蒸留所名・ブランド名はMilk & Honey。
なんだか名前からして美味しそうです。上記ブランド公式サイトによれば、原酒をスコットランドから調達し、蒸留だけ当地で行うやり方ではなく、糖化から樽熟成に至るまでイスラエルで行っているといいます。熟成に使用する樽はバーボン樽とアメリカンホワイトオークの新樽、それにワイン樽など。
蒸留所のコンサルタントに、キルホーマンやカバランなどにかかわった故ジム・スワン博士を招いたことでも、その本気ぶりがうかがえます。
ぼくがいただいたのは、「ヤング・シングルモルト」と銘記されたもの。ラベルを確認してみると、ヤングとは「8カ月もの」のようです。アードベッグのリミテッドボトル「スティル・ヤング」「ベリー・ヤング」とは、もちろん意味合いが違います。
が、この「M&H」のヤング・シングルモルト、良かったです。熟成年数の浅いハイランドのシングルモルトを飲んでいるようなイメージ。ほどよい果実香と、若いウイスキー特有の麦香が押し寄せてきます。味わいは甘さ主体で、「ヤング」という語は不要ではと思うほど、こってりした濃いものでした。
それもそのはずで。考えてみればイスラエルは気候の暑い中東ですもんね。砂漠や死海のキワキワに倉庫を立てて、熟成させたらどうなるんでしょう?
上記サイトをかいつまむと、テルアビブの平均気温は13度~26度で推移し、湿度50~90%。この気候によって、テルアビブの3年ものウイスキーは、スコッチの6~8年ものに相当するようです。
今後年数表記によらない流れが加速するともいわれる業界ですが、バーボンのようにイスラエル産ウイスキーはノンエイジ主体の販売でもいかもしれません。ヤング・シングルモルトを少しだけ飲んで、そう感じました。
オーナーはGKIグループ。2012年にイスラエルで2番目に人口の多い都市テルアビブに設立され、操業開始は2014年。蒸留開始は2015年というホヤホヤの蒸留所です。資金の一部をクラファンで募ったそうで、オーナーのひとりであるガル・カルクシュタインさんも若い起業家ですね(CNNのインタビューに答えています)。
今のウイスキー愛好家が造ったイスラエルのウイスキー(「コーシャモルト」と呼ぶのでしょうか)、先々が非常に楽しみです。