クラフトウイスキーの先駆者である肥土伊知郎さんは、新しいチャレンジを日々せずにいられない気質の人なんだろうと思います。商品化に結実にするまでには幾多の試行錯誤を重ねたのは想像に難くないですが、イチローズモルトとピート(泥炭)が結びつくイメージが、なかなかつかめないんですね。だからこそ、見つけたときには躊躇も戸惑いも捨て去って、飲み手はトライあるのみです。
この日お目にかかったのは2018年=創業10周年のときにリリースされた、イチローズモルト ピーテッド。アウトターンは11,550本のようです。
イチローズモルト 秩父 ザ・ピーテッド 2018
- 香り…柔らかい。ピートの奥に樹液。ビオフェルミン糖衣、高原と針葉樹。ロッテのグリーンガム。
- 味…多様性あるライトボディ。うっすらとキャラメルチックな甘さ。後口は砂糖をかけた生姜。余韻は長い。
- 総評…スモーキーというより、早朝に森林を散歩して遭遇する朝霧のような爽やかさも。どっしり感はなく複雑なライトボディで、広くウイスキー好きに受け入れられそう。
@ロイヤルバー
スモーキーだのピーティだのというと、それだけでノーサンキューという人もいますよね。でも、このイチローズモルトは嗅いだ瞬間に「ウッ」となる感じがないんです。味わいはどこかミルクキャラメルを彷彿させるものもあって、バーボン樽を使用しているのではないでしょうか。秩父印のミズナラではないでしょうし、熟成年数も比較的若めな感じがします。ボトルには未記載ですので、例によって推測の域を出ませんが。
アイラ島のキルホーマンが大麦の収穫からボトリングまでをアイラで行う「100%アイラ」をリリースしたように、同様の工程をすべて秩父で行う「100%秩父」の出る日も近いのではと踏んでいます。
それにしても、このピーテッドをいただいてみて、全く違うことを考えていたのですが。古本屋さん巡りも好きな身として、古本との出会いとウイスキーの出会いって一期一会に近くて似ているんですよね。そのときに気になる書籍に出会ったなら、すぐに買っておくべき。シングルモルトの年代もの(年数もの)や限定版なんかも、同じことがいえます。次回でいいや、なあんて悠長に構えていると、一期一会のチャンスを逃してしまいかねません。
ま、酒や本以外でもそう。後悔したくないから、これからもどんどん試していきますよ。
(2019年7月10日追記)
ウイスキーをストレートでお願いしたとき、お水を合わせて付けてもらいますよね。このイチローさんをいただく際、バーマンがチェイサーのお水に「氷を入れないほうがよろしいですか?」と言ってくれたのは、うれしかったなー。
氷入り、氷なしにこだわらないのですが、じゃあ何がうれしいかって、その心配りであり優しさです。これがさりげなくできてしまうロイヤルバー、素晴らしい。ちなみに最初から氷なしのお水を出してくださるところは、珍しくありません。