人工知能ならぬ、人工「舌」が開発されたというニュースを目にしました。一瞬、何のために?と思いますが、その期待される効果はウイスキーなどアルコールドリンクのニセモノ対策。実用化・汎用化されれば、古酒を扱う酒販業のお店さんや愛好家などのニーズに応えるものとなりそうです。
記事によると熟成年数の違いだけでなく、お酒に含まれる化学物質の違いも識別できるとか。開発したのがグラスゴー大学の科学者というのも、さすがスコッチの国です。記事を読むかぎりでは精度の高さに期待して良さそう。オークションに出されるような古酒なら、熟成樽の構成とか環境を見分けた判定結果をもとに、流通年代までトレースできちゃうんだろうな。
お酒のプロフィール、スペックがわかるとどうなるか。確かな知識と、鋭い鼻・舌をもつ評価者はますます磨きがかかります。そのうえで、上記事のような「鑑定器」が身近になった未来、評価者=テイスターは(好みも含む)評価力を見られ、それらの評価を参考にする飲み手は、より自分の好みに近い評価者の意見=テイスティングノートを参考にするんじゃないでしょうか。科学的な裏付けは鑑定器に任せればいいんだもん。
それでは、鑑定器のような人工知能=AIくんでもかなわない海とはどこか? それは表現力ではないでしょうか。お酒を飲んだイメージを膨らませて、言葉に起こす力です。テイスティングノートはその表現をもってポエムと揶揄されることがありますが、もしももしも鑑定器が身近になった場合、テイスターは表現力がいっそう問われることは間違いない。
お酒、特にワインやウイスキーはその「プロフ」や「育ち」を背景にして、飲み手に想像させるものですから。ぼくも飲んだ分だけ記録するようにしていますが、その記録がより伝わるよう、愚直に照れずに文字にしていくつもりです。