鈴本演芸場2019年9月中席夜の部のトリは橘家文蔵さん。中日にあたる9月15日(日)の回に見てきました。
文蔵さんはコワモテぶりゆえ、他の噺家さんにまくらでよくネタにされます。たとえば乱暴者の兄貴分が出てくる「らくだ」のような演目は、即座に演者に文蔵さんが思い浮かぶくらいです(実際に文蔵さんが「らくだ」を演じたCDも出ています)。
が、文蔵さんの高座をよく見る人は、そういうコワモテ要素は表層的な一側面でしかないことを知っているはず。文蔵さんは、仕草や表情、声のトーンの強弱など、ひじょうに繊細に演じます。
この日の「寝床」は、下手くそな義太夫を聴きたくない長屋の連中の言い訳を聞いて、だんだんキレてくる(表情がなくなってくる)旦那の演技がコワ可笑しい。「扇辰はどうした?」「ペペ桜井は?」と店子の名を他の演者に置き換えるアドリブなどでも、アグレッシブに笑いを取っていた文蔵さんでした。
この日はまた、ほかの演者さんもトリの文蔵さんにまつわる小ネタをまくらで披露するなど、文蔵さんのおちゃめな一面を垣間見ることができました。なかでも勧之助さんが披露した、文蔵さんと飲んだ帰り道での出来事はなかなかに衝撃的。言っちゃって良いのかなぁと、こちらが心配になるくらい。仲が良すぎるゆえのエピソードを目撃しちゃった気分です。
柳家緑助「たいこ腹」、翁家和助 翁家小花、五明楼玉の輔「マキシム・ド・呑兵衛」、古今亭菊太楼「粗忽の釘」、林家正楽、柳家勧之助「熊の皮」、入船亭扇辰「目黒のさんま」
中入り
アサダ二世、春風亭百栄「弟子の強飯」、ペペ桜井、橘家文蔵「寝床」