東京国立博物館の本館1階で開催されていた『文化財よ、永遠に』という展示を観てきました(~2019年12月1日)。住友財団修復助成30年を記念する特別企画。住友財団の支援によりよみがえった仏像を展示しながら、修理・修復の過程を紹介するものです。
仏像というと関東なら鎌倉、関西なら京都や奈良といった地にある有名な大仏などの国宝・重文を思い浮かべますが、日本各地のいたるところに残されています。本展で特に印象的だったのは木像。漆や膠(にかわ)が劣化する、彩色が薄れてしまう、虫食いによる凸凹ができてしまうなど、経年による傷みが顕著です。
経年劣化だけではありません。東北や北陸にある仏像の中には、大地震で台座から落下してしまい、粉々になってしまったものも。これをイチから直し、元の状態に戻すというのですから、相当なものです。
なかでも高成寺「千手観音菩薩立像」(福井県小浜市)は、制作年代が平安時代に遡る重文。修理の大きな特徴として、脇手(わきしゅ)と呼ばれる多数の手の解体、彩色の除去が挙げられるそう。
前者は1本ずつ取り外して解体し、補修して接合し直す。後者の「除去」とは意外ですが、どうやら彩色は後の時代の修理された際に塗り足されたらしく、除去したほうが表情がよく見えるということで、作業(剥落止め)が行われたとか。
修理する過程で、過去の修理の記録(墨書)が見つけることもあるそう。それによって制作年代や関係者のルーツがわかるというのも面白い。怪我の功名というやつでしょうか。
さすがはトーハク、本展のリーフレットをきちんと配布していました。それによると、住友財団は1991年の設立以降、累計1,100件以上の修復を助成してきたといいます。
「住友の事業は住友だけでなく、国家、社会を利するほどの事業でなければならない」という活動理念に基づくそうで、さすがに財閥は器の大きさ、スケールが全く違います。こういう言葉を、昨今の成長企業から聞かれなくなったのは少し残念。かつて「企業メセナ」って言葉がありましたが、もはや完全に死語ですね。
「経済は一流、文化は……」どうなんでしょう。自分を棚に上げて言えば、経済も政治も文化も、上滑りだなと思う昨今です。