いくつかの雑誌編集に携わったり、愛読したりしているなかで。個人的に「これだ、こういうのを作りたい」という雑誌の一つが「うえの」(B6判/定価200円/上野のれん会発行)です。
1959年5月創刊で、昨年60周年を迎えた老舗雑誌。上野界隈に立ち寄られたことのある方は、外食店などで目にしたことがあるかもしれません。奥付で定価をうたっていますが、店舗ではtake freeです。ほとんど手のひらサイズ。約50ページにわたる中面にびっしりと濃い特集や連載がひしめき合ってます。
まずね、執筆陣が豪華。2020年1月号では発酵学者の小泉武夫先生、東京国立博物館の銭谷眞美館長、落語家の柳家さん喬さんなど。不定期連載では、美術家の篠田桃紅さん、映画評論家の佐藤忠男さんなどのエッセイを読むことができます。
そうした連載陣の贅沢さをお膳立てするのは、1色印刷の文章と、美術館の開催案内等を兼ねた4色グラビアなどのバランスです。この辺の緩急も読んでいて飽きさせないのですね。
ネットの横書きの文章に慣れた人には、素通りされるかもしれない。けれども、ちょっとした読書家や縦書きの文章を愛する人には、この「うえの」は間違いなくフィットするはずです。
ぼくのような地元に住んでいる人間にはなおさらツボですが。活字好きなら「この人が、こんなところに顔を出している」という発見があるのが、この媒体です。百聞は一見に如かず。上野界隈にお立ち寄りの際は、頭の片隅に入れておいてください。