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『窓展』でモチーフの七変化を体験する。

東京国立近代美術館『窓展』

東京国立近代美術館で開かれている『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』を観てきました(〜2020年2月2日、2020年7月11日〜同年9月27日に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)。文字通り、窓にちなんだ作品を紹介する展覧会。章立てや企画性が冴えわたる展覧会で、昨秋に続き2回目の鑑賞と相成りました。

一般財団法人 窓研究所の知見をもとに、建築史家・五十嵐太郎東北大学大学院教授と近美がキュレーションした、国内外のアーティストの絵画・写真・インスタレーションなど117点を展示しています。前半の展示にある、窓にちなんだ作品の世界史(出自)年表も、よくぞこれだけ情報収集したなぁという充実ぶり。

コルビュジエの内装スケッチ、マティスの油彩画、岸田劉生の「麗子肖像」、ロベール・ドアノーの風刺(盗撮?)写真、津田青楓の「犠牲者」等々。窓というものを美術作品のなかで深く意識したことなどありませんでしたが、重要なモチーフになっているものがかなりあるんですね。

なかでも強烈に印象的だったのが2点。ひとつは日中韓のアーティスト3人のユニット・西京人による「第3章:ようこそ西京にーー西京入国管理局」というサイズ可変のミクストメディアです。これ、架空の国家「西京国」を舞台にした観客参加型の超異色作。観客は笑顔や歌、ダンスを披露し、「入国」が許されるというもの(入国審査するのは、美術館スタッフ)。誰もが笑顔になるこんな平和なイミグレなら、テロや紛争という憎悪も減るかもしれない。体験しながらそう思いましたよ。

東京国立近代美術館『窓展』の「第3章:ようこそ西京にーー西京入国管理局」

もうひとつは展示冒頭にある、横溝静さんの『Stranger No.5』『Stranger No.13』というタイプCプリント。着想がユニークです。「見知らぬ人へ」と宛書きされた手紙には、あなたの家の部屋の窓辺に立ったあなたの写真を撮らせてほしい、もし協力してくれるなら何日何時何分に窓辺に立って外を見つめてください、そこで私がカメラを据えていますよ、もし協力できないならカーテンを閉めて拒否の態度を示して、とーー。作品の脇には、アーティストが個人宅に投函したであろう、この手紙の複製も展示されています。

要するに、写真家と被写体が互いを知らないまま撮影された作品というわけです。窓ガラスを通して、こちらを見つめる名もなきモデルさんは、ミステリアスな色彩を帯びて、鑑賞者を見つめ返します。

示唆に富んだ展覧会で、これを書きながら昨秋の鑑賞直後にUPすれば良かったと思ったくらい(そのときは鏑木清方の「築地明石町」に夢中だったのよ)。そうそう、入口でピックアップできる「窓学の視点から見る窓展」という小冊子もお忘れなく。後で読み返すと、より展示作品を咀嚼することができます。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性