アフィリエイト広告を利用しています。

「笑の大学」を人情噺に昇華させた柳家さん生さん。

落語版「笑の大学」(2020年)

三谷幸喜さんの同名名作戯曲を、柳家さん生さんが落語に翻案した『落語版 笑の大学』を観てきました(2020年12月17日、内幸町ホール)。
その見事な換骨奪胎に驚かされました。

三谷幸喜さん原作の『笑の大学』は、もともとラジオドラマで放送されたものを、三谷さん自ら二人芝居にしたもの。
戦時の日本を舞台に、娯楽を規制し取り締まる検閲官・向坂睦男と、劇団「笑の大学」座付作家・椿一の攻防を描く人間ドラマです。
1996年に今はなき青山円形劇場で初演され、1998年にPARCO劇場で再演。
向坂を西村雅彦さん、椿を近藤芳正さんが演じました。

警察の取調室を舞台にした三谷さん得意のワンシチュエーション劇で、向坂に書き直しを命じられた椿が台本を直すごとに、どんどん作品が面白くなってしまうパラドックスが物語の横軸。
通底するのは戦争という時代背景でそこが結末に繋がるのですが……ここでは触れないでおきます。

もともと今年6月に予定されていた振替公演で、ぼくが観に行けたのは翌日の追加公演。
一幕目、ゲストの春風亭ぴっかり☆さんの後に登場したさん生さんは「天狗裁き」を。
てっきり休憩を挟んで二幕で演じるものと思っていたので、意外や意外。

可笑しくも悲しい、悲しい余韻しかない作品が落語になるんかいなと思いましたが……見事でした。

10分間の休憩を挟んで幕が開いた高座には、見台が。
なるほど見台を取調室の机に見立てて、検閲官・向坂と劇作家・椿の取調室の攻防を再現したアイデアに思わず膝を打った次第。
さん生さんの高座というよりは、動きのない一人芝居を観てるかのよう。
サゲもきれいでした。

二人芝居という意味では確かに落語にアレンジできそうな気がしますが、オリジナルの笑いがありつつも重苦しい雰囲気と物語の最後。
よくぞ、これを人情噺に昇華させたなぁと思います。
さん生さんの着想勝ちですね。

余談ですが、さん生さんと三谷さんは同じ日大芸術学部の出身なんですね(さん生さんは中退)。
そういう繋がりがまた奇縁ですね。

柳家さん生独演会「落語版 笑の大学」

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性