一之輔さんが意外にも、笑えない噺を披露。
白酒さんも興が乗ったのか、終演予定を30分以上オーバーする会でした。
エレベーター 信楽
代脈 白酒
水屋の富 一之輔
仲入り
反対俥 一之輔
お化け長屋 白酒
2024年5月23日19時開演
日経ホール
一之輔さんの『水屋の富』
富くじを当てたのに人間不信のあまり結局当せん金を失うストーリー。
湯島天神の富くじで八百両もの大金を当て、いそいそと持ち帰る水屋さん。押し入れに天袋と隠し場所に難儀し、とうとう縁の下に隠すことに。
泥棒に入られる妄想が止まらず、いったんは大金を納めた天袋から引き上げるときに、神棚に悪態をつくくだりは、いかにもの一之輔さん。
商売に身が入らず得意先回りに遅刻し、道ゆく人やなじみのご近所が皆、自分のカネを狙っていると思い込む。
でも一之輔さんが演じるとノイローゼというよりは、気の毒なくらい神経質な人に見えて、苦い結末に後味の悪さというよりも悲哀を感じてしまう不思議。
「こんな話もあるということで」と二席目の冒頭にポツリ。
一之輔さんがこの噺を持っているのには意外性を感じましたが、同じ噺ばかり演っていると飽きてしまうのかもしれないですね。
年間900席の超絶売れっ子、いったいいつ稽古してるんだろ。
白酒さんの『お化け長屋』
住まっている近隣地域の悪口陰口は受けると、白酒さんならではのブラックな前段から。
これがかかると「もう夏か」ってな具合ですが、怪談ではなくおなじみの長屋噺。
物置代わりに空き家を好き放題使っている杢兵衛さん。ここに他人を住まわせてなるものかと怪談をでっち上げ、内見に来た借り主を追い返す。
だがふたり目に来た江戸っ子の職人は家賃がタダと聞いて、なぜそんな好条件なのかに耳を貸さず越してきてしまい……。
この悪だくみに協力させられるのは与太郎と、海苔屋の婆さん。
二人によるニセの怪奇演出のドタバタと、言葉遣いの妙味を生かしたサゲがいかにもの白酒さんでした。
まとめ
動きの多い演目の一之輔さんと、言語のカロリー高めな白酒さん。
案外この二人の二人会ってないですよね。
でもわかる、相性が合わなそうw
この企画は柳家三三さんが入る三人会ですが、白酒、一之輔どちらと組んでも違和感ない三三さんのバランサーっぷりね。
この日の一之輔さん、二席目は「となりのトトロ」の出囃子で登場。
一之輔さんの『反対俥』は新作ともいうべき改作で、年寄りの車夫の子どもを登場させるのが妙。
まくらで子どもさんと一緒に見る『金曜ロードショー』を振っていて、本編でサクマ式ドロップスのネタを織り込むあたりが凄いやね。
戦略的に「こうしてやろう」ではなく、頭の回転の速さがなせる業なんでしょうな。
どちらもたっぷり。平日に労働強制終了して聴く快感に浸りました。