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『ポート・オーソリティ-港湾局-』:男3人の人生の欠片を映す朗読劇。

『ポート・オーソリティ-港湾局-』セット

アイルランドの劇作家コナー・マクファーソン作による朗読劇『ポート・オーソリティ-港湾局-』(常田景子訳、荒井遼演出)、3月30日17時30分の回を観に行ってきました。
日替わりキャストによる公演で、この回は橋本祥平、山中崇、大谷亮介という組み合わせ。

あらすじのようなもの

  • 家を出てルームシェアする行動を起こすも、彼女の気持ちが分からず心を揺らす若者ケヴィン(橋本)
  • 分不相応なセレブ世界への転職を決めたのも束の間、それが泡と化してしまった平凡な中年男ダーモット(山中)
  • 老人ホームで遭遇した女性との愛情と、ちょっとした後悔を回想する高齢者ジョー(大谷)

3人がそれぞれ、自分に起きたことをベンチや椅子に座って代わる代わる独白する物語で、セリフを交わす場面は皆無。おそらくは互いに顔も知らない。
劇的な展開はなく、物語は淡々、切々と進みます。

所感

実はコナー・マクファーソンの『海をゆく者』という演劇が好きで、昨年12月の東京公演を観たばかり。
本作はその『海をゆく者』のアンサープレイとの触れ込みでしたので、慌ててチケットを取った次第。

上のあらすじは劇場で売っていたプログラムを参考にしたもので、正直1回で理解できる内容ではありませんでした。
なので再演を希望したい。

プログラムに掲載された獨協大学の児嶋一男教授の解説によると、入出港の管制者を意味するタイトルは、そのまま神になぞらえるともいえるのだそう。
本作に登場する3人は、どちらかといえばちゃんとしていない男ばかりで、しかも周り……特に女性に翻弄される。
なるほど、してみると、別居中の妻との関係をはじめ、どうしようもない問題の数々を受け入れ、どうにか前に進もうとする『海をゆく者』の登場人物シャーキーにも通じるものがあります。
ちなみに『海をゆく者』でシャーキーを演じた平田満は、今回ジョー役を大谷亮介と分け合っています。
大谷も同作品に出演しており、これが偶然のキャスティングなのか知りたいところです。

それにしても、内容をちゃんと理解できなくても、不思議と印象に残る作品でした。
3人が眠って終わる終幕やカーテンコールにかかった、あがた森魚の「水晶になりたい」もいい。

それぞれの人の身に起きる問題や鬱屈とさせる現状を、受け入れつつ、迷う、さまよう。
無理やり解決しようでもなく、無理やりポジティブにさせるでもなく。
コナー・マクファーソンの戯曲は、だから琴線に触れるんだろうな。

アイキャッチ画像は終演後、アフタートークの間で撮影許可されたセットです。
海岸と漂着物を彷彿させて、それもまた良かった。

@シアタートラム

『ポート・オーソリティ-港湾局-』

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

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