ジャパニーズウイスキー、挑戦と試行錯誤の断片。

誰が呼んだか……知られたことでありつつ、あえて言いますけど「5大ウイスキー」ってカテゴリ分けは日本独自のものなんですよね。
某大手メーカーがそうやって売り出したという説もあり。

名実とも一番たるスコットランドの造り手が、そんなカテゴリ分けをする必要はないし。
いえ、5大なる標榜の仕方を否定しませんので、どこで造られたものであれ正当に評価しようではありませんか。

ウイスキープロフェッショナル根本毅さん主宰の講座で、そう再認識しました。
今回のテーマは「ジャパニーズウイスキーを楽しもう」で、下記テイスティングメモとともに。

1. キリン エバモア(evermore)2000 21年 40%

  • 香り…ロッテのジューシーフルーツガム、セメダイン、レモンウォーター、ワックスペーパー。
  • 味…嫌味のない味で、すっきりしている。黄色い果実、まだ青いバナナ。

キリン富士御殿場蒸留所製造の21年物モルト原酒とグレーン原酒およびスコッチ原酒をブレンド。
同蒸留所は1999年から2005年まで毎年1回リリースしていたそうで、こちらは2000年のヴィンテージボトル。

モルト4割、グレーン6割との比率説も納得で、同蒸留所が謳う「クリーン&エステリー」を体現するもともとのバージョンは、すんごいスムースです。
キリンビール、カナダのシーグラム社、スコットランドのシーバスブラザーズの3社合弁で設立された「キリンシーグラム社」の名を、懐かしさをもって聞くオールドファンもいるのではないでしょうか。

ところでキャップの形状がまたユニークなのがお分かりでしょうか。
瓶の裏側にはキャップの開け方の説明書きが(下写真2枚目)……勢い余って壊してしまいそうです。

キリン エバモア 2000

キリン エバモアのキャップ

2. サントリー 1981 木桶仕込直火蒸留 Pure Single Malt Whisky 43%

  • 香り…濡れた木、苔、シダ、青森の奥入瀬渓流。
  • 味…飲むとピート感が。ごまあん、醤油、浅煎りコーヒー。

1999年終売、こりゃまたレアな白州です。
喩えようがないなぁと思ったら「松脂」と言う人がいらっしゃって、途端に野球や弦楽器でおなじみ滑り止め「ロジンバッグ」かと納得。

白州(東)蒸留所ローンチ後、ダグラスファーの発酵層、オレゴンパインの糖化槽、初留直火蒸留の原酒を詰めたモルトウイスキー。
サントリーは同時期に「古樽仕上1991竹炭濾過43度」という商品も発売していたそうで、今なら豪放磊落な試みがたまりません。

サントリー 1981 木桶仕込直火蒸留

3. ニッカ カフェモルト 2019 NIKKA CAFFEY MALT WHISKY nin-age 45%

  • 香り…薄い。ウインナコーヒー、ナビスコオレオ、やや金属臭。
  • 味…甘さ優勢。黒糖、ほんのりと燻製、明治のコーヒービート。

連続式蒸留機(カフェ式)で造られているので、カテゴリはグレーンウイスキー(モルトウイスキーではない)なんですよね。
コフィ(caffey)式連続式蒸留器と、カフェ(coffee)というネーミングに因果関係はないはずですが、どこかコーヒーを思わしめる香味があります。
そのイメージの齟齬までニッカが考慮に入れたのであれば、あっぱれなヨミですね。

ところでJR仙山線作並駅近くにある宮城峡蒸留所の現住所は、宮城県宮城郡宮城町ニッカ1番地。
1969年に宮城郡宮城町大字作並から住所表記を変更するという、役所も動かす力の入れよう。ニッカの後発蒸留所は第二工場というには、忍びないものがあります。

ニッカ カフェモルト 2019

4. イチローズモルト(羽生)1986 Ichiro’s Malt Vitage Single Malt 1986(Bottled2007) barrel Cask OT176/225 58%

  • 香り…さくらんぼ、腐葉土を敷き詰めたプランター、おがくず。
  • 味…一瞬の塩辛さの後にホワイトチョコレート、XO醬。後口はかなりスパイシー。

肥土伊知郎さんが笹の川酒造に預けた羽生蒸留所400樽の原酒のうち、1樽をボトリングしたもの。
イチローズモルトの原点を知る貴重なモルトウイスキーで、土っぽさ、農場っぽさが前面に出ています。

イチローズモルト(羽生)1986

5. イチローズモルト(秩父)2011-2019 8年 Malt Dream Cask Bourbon Barrel MDC for TMC 62.3%

  • 香り…一瞬の青臭さ、バナナチップス、バナナミルク、仁丹。ひじょうに複雑。
  • 味…パンチが凄い。ツンとした香りに乾菓子、キウイ、パイナップル、パフェ、ベリージャム。

「モルトドリームカスク」という秩父蒸留所の原酒を、個人が樽単位で購入し、熟成を確認して瓶詰めされたもの(現在は行われてません)。
今回の6アイテムの中で最も美味しいと感じました。

イチローズモルト(秩父)2011-2019

6. サントリー山崎 2003(botteled2014) Spanish Oak BotaCorta 55%

  • 香り…シェリー酒、プルーン、いちご大福。
  • 味…一瞬の紹興酒、焦がしたドライレーズン、後口は若干の苦味。

色が赤い!というか紅い、山崎っぽくないというのが感想。
大阪サントリービル(大阪市北区堂島浜)1階のサントリー製品直売コーナーに、2010年から2016年の閉店まで直営店限定ボトルが売り出されていたそうで、そのうちの一つ(ショップ4周年記念ボトル、190ml)です。

サントリー山崎 2003

現在ジャパニーズウイスキーの定義なるものは酒税法という税法ベースでしかなく、なんともお寒い現象。
まぁ、他国から運び入れた原酒を混ぜて売ってるものも珍しくないですから、業界がせっかくのブームに水を差すような、ましてや自分たちの商売の首を締めるような行動をするわけないですよね。

だけれども。少なくともブランディングを確固たるものにするには、先送りせず業界を上げて取り組んだほうがいいんじゃないかと素人目には見えます。

ある意味、完成品になるまで時間を要するウイスキーは、緩やかにシフトチェンジができるチャンスに恵まれているのでは。
しがらみが多い課題なのは想像に難くないですが、あとはやるかやらないかでしょうね。

@Bon Vivant

この記事を書いた人

hiroki

Webの中の人 / ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート / SMWS会員 / 訪問したBAR国内外合わせて200軒超 / 会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年) / ひとり歩き / 健全な酒活 / ブログはほぼ毎日更新1,700記事超(2021年10月現在)/ ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性