「あなたのためのカクテル」という、すてきな企画を立てたバーテンダーがいます。
神楽坂のBAR「燐光」の山谷頼子さんがその人。
このツイートがきっかけで乗ってみることにしました。
あなたのためのカクテル
というサービスを期間限定で始めてみますこれは、歌人の木下龍也さんが
あなたのための短歌
ということをやっていて
めっちゃいいなと思ったので
わたしはカクテルでやってみようと思ったのです興味がある方
遊んでみてください https://t.co/wFqGgi9ZiS— BAR燐光 (@bar_rinkou) January 24, 2021
どうです、いい企画でしょう?
「味の好み」と「お題」をこちらから出して、それに応じて山谷さんがオリジナルカクテルを創作する趣向です。
で、ぼくからは
味の好み:とにかく任せる
お題:「満たされない男」
と彼女に伝えました。
リクエストしてから2カ月を超え(実際は2週間で完成していた)、ようやく伺って腕を奮ってもらいました。
長らく行けなくてゴメンよ。
作ってもらう所作を見つつ待つのは、なんかうれしいね。
自分に向けてくれたオリジナルレシピだもん。
彼女を待ち合わせ場所で待つ、あの感覚かね。
ドキドキするなぁ。
待つこと4分(体感)。
出来てきたショートカクテル「満たされない男」です。
なんつーお題だって?
満たしてくれるのか、渇かせるのか。
ウイスキー系かジン系か、はたまた常に酔っぱらってる中年男に対してのコープス・リバイバー(蘇生剤)・ハングオーバードリンク(2日酔い対策)か。
どういう答えを出してくれるか期待していたのです。
で、そのどちらでもない、予想を上回るカクテルを作ってくれました。
結論、満たされた。
ほんと素晴らしいね。
山谷さんが事前に送ってくれたレシピとキャプションはこちら。
〈レシピ〉
ドライジン
アブサン
パルフェタムール
ブルーキュラソー
レモンジュース
満たされない憂鬱な思い
鬱屈とした気持ちは
もう爆発寸前である
いつになれば俺は満たされるのか!
……いやはや、うーむ。
さすが、こっちのことを分かっていらっしゃる。
まいっちゃうね。
軽い興奮とドキドキと。
ひとくち、ふたくち、地面にはアブサン、そこからジンが立ちのぼる。
このビジュアルとは違って、苦み走った味わい。
そんなショートカクテルです。
この小首を傾げたグラスもレシピだそうで、おれのクセを再現してくれてるのか、ひん曲がった性格を見抜かれてるのか。
紫色の妖しい感じはパルフェタムール効果。
販売元のアサヒビールの商品記事に
「多くのバーテンダーにとって扱いが難しいリキュールで、これを材料にしたカクテルで知名度の高いものは存在しません」
って書いてありましたよ、そうなの?
「ブルームーンとかバイオレットフィズとかに使いますね」
「あぁなるほど、そうなんだね……分からん!」
んな感じの、飲ませがいのないヤツで恐縮ですが、これはアブサンやジンが好きな方なら、イケますよ。
おれ専用のカクテルってことで、以降個人的にレギュラーで頼みますけど、せっかくだからもっと広めたいなぁ。
ギムレットやサイドカーのように定番化されたら、なおウレシイんだけどね。
しかし、不思議なのはこういう独自のアイデアが、他のBARからなぜ生まれてこないんだろう、と。
まぁこれってマニアックというか変態の領域なのかもね、実行するバーテンダーも、求める客も。
ゲストと親密性のあるBARのような場こそ、マスではなく1to1マーケティングのようなものが向くと思うけど。
テマヒマの問題なのかねぇ。
そんなわけで酔った頭でボーッとしながらも、足取りも軽く帰宅したのでした。
@燐光