イキウメ『外の道』、解なき不条理の恐怖(ネタバレあり)。

シアタートラム「外の道」

これは嘘か真か、どちらが虚か実か。
あまりに悪いことが起こると「これは悪夢だ」と現実逃避し、起こったことを認めたくなくなる。
そんなことってありません?
おれはあるのよ、ありえないありえないと堂々巡りしてしまう瞬間って。

周りは自分のことを責めるが、そんな周りこそ異常なのだ。
そう考える男女の行き先はどこか。
イキウメ『外の道』(シアタートラムで2021年6月20日まで、大阪・豊橋・北九州公演あり)は、解なき問をぶつけるホラーです。

「喫茶店」を思わせる空間で待ち合わせた、同級生の寺泊満(安井順平)と山鳥芽衣(池谷のぶえ)。
親しい間柄でない二人だが、話し合っているうち、互いに奇妙な体験をしていることがわかる。

寺泊は手品師(森下創)のクロースアップマジックを見て、そのタネを教えてもらったことで「新しい眼を持ち、見える世界が変わった」という。
愛妻(豊田エリー)も突如輝きを放って見えるようになったが、彼女はどうやら浮気しているようだ。
徐々に、寺泊は常軌を逸した行動に出る。

芽衣は品名に「無」と書かれた、差出人不明の段ボールを受け取ってから、自宅が暗闇に支配されてしまった。
迎えた覚えのない養子を名乗る青年(大窪人衛)が忽然と現れたことで、芽衣の精神は極限まで追い詰められる。

科学が進歩した今、不可思議な現象をありえない話と片付けるのは簡単ですが。
人知を超越した出来事に出会った、という人を否定できますか。

自ら問題を起こしたけど、これは正当だと言い張る男。
身に覚えのない物的証拠で追い詰められた女。

この芝居のように「自分は正常に生きている(異常体験をしてわけではない)」のに、周りからは「あなたの言動は変だ」と諭される。
狂っているのはどっちか。
そもそも起きていることは本当なのか。

終幕、いつからここに来て、いつから話し合っていたんだっけ?と笑い合う寺泊と芽衣。
しかしその場所は「喫茶店」などではなく、精神科病院なら——。

なるほどタイトルの『外の道(そとのみち)』は=外道(げどう)とも読めます。
道を外れたならず者……を想起させますが、いろいろ意味があります。

【外道】[名](1)仏教以外の教え。また、それを信じる人。 (2)真理にはずれた道。異端。 (3)ひねくれた、心のわるい人。人でなし。人をののしっていう語。 (4)釣りで、釣る目的でなく釣りあげた魚。
――小学館「新選国語辞典」第七版

真理にはずれる、とは。
大多数の人が思う普通や標準へのアンチテーゼであり、それに反することはすべて異常=そとのみち。

暗転が3回もある演出を堪能しつつ、セリフが妙にリアル(池谷のぶえさんの演技に固唾をのむ)なのに、世界が不条理という恐怖。
なぜそうなったか意味不明、解決策も全然ない。
得体の知れなさこそ恐怖の本質なのだと心胆寒から​しめる、そんな芝居です。

@シアタートラム(2021年6月5日18時公演)

イキウメ『外の道』

この記事を書いた人

hiroki

Webの中の人 / ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート / SMWS会員 / 訪問したBAR国内外合わせて200軒超 / 会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年) / ひとり歩き / 健全な酒活 / ブログは原則毎日更新1,000記事超(2020年1月現在)/ ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性