BSフジpresents「プライム落語in横浜 古典・新作が炸裂する、これぞ珠玉の落語会」(2021年9月11日、横浜市市民文化会館関内ホール 大ホール)。
柳家喬太郎さん、林家彦いちさん、桃月庵白酒さん出演の昼公演に出かけてきました。
転失気 扇ぽう
松曳き 白酒
遥かなるたぬきうどん 彦いち
仲入り
品川心中 喬太郎
「黒い時事ネタ」をたびたびマクラにする白酒さん、今回は与党総裁選に絡む話で。
今はこの難局を乗り切ろうと汚れ役を自ら買って出るような人がいないのでは。
かといって敵ばかり作る人でも困るけど……と、ある落語家の名を挙げて人材難を茶化す白酒さん。
白酒さんの話を聞きながら、たしかに「この人のために」と身をなげうつ、一肌脱げる人がなかなか見当たらないと同意。
だから自分が不利益を被らないよう、役人の間で忖度がまかり通る。
「国をどうするか」という極めて大きな仕事なのに、こんな感じでは暗澹たる気持ちにもなります。
でもこれって、公務員だろうが民間だろうが、どの世界も同じことで。
「この人の役に立ちたい」「この人に褒められたい」と自分ががんばれたのはいつだっけ?
駆け出し時代にはそんな一心だったな……ずいぶん昔の記憶で、人のことなんか言えませんね。
白酒さんの「松曳き」はテンポも滑舌もチャキチャキの楽しさです。
落語界隈では珍しいであろう、体育会系の彦いちさんはコロナ禍での寄席裏話から。
「SNSに上げてはダメですよ……と言いながら、どんどん広まっていくのが正しいクチコミ」とニヤリ。
自身のヒマラヤ登山を同業者に告げたときのリアクションのエピソードは、噺家らしさが満点で大笑い。
そのマクラから、マッターホルン山頂にいる客に出前する奇想天外な話「遥かなるたぬきうどん」。
トリの喬太郎さんは持ち時間が長いことをボヤきつつ。学校寄席での九州&沖縄への遠征エピソードを。
与論島などは噺家が連れ立って行くところじゃない! と言いながら、与論島に行こうとしているカップルのやり取りを再現。
オエーッとなる(褒)人間観察は喬太郎さんならでは。
そこから、まさかの古典「品川心中」へ。
入れあげる女郎に心中を持ちかけられた男と、土壇場で現れた太客に死ねなくなった女郎。
男と女を芝居心で演じる喬太郎さん、落語というより一人芝居を見ている気分にさせられるから不思議です。