古典落語の噺家で最も面白い一人、桃月庵白酒さんの独演会に行ってきました。虎ノ門のJTホールで行われた落語会です。
この日は前半2席と、休憩時間を挟んで後半1席の3席でした。前半の「金明竹」は早口でまくし立てる上方訛りの商人に困り果てる骨董屋の女将と、手伝いの与太郎の話。
噺家は一人何役もこなすのが当たり前ですが、白酒さんはこの演じ分けも上手いんですね。特徴的というか、人物描写をものすごくデフォルメしている。
特に極端な鼻垂れ小僧の与太郎と、厳格で融通が利かない旦那のギャップが激しい。小僧がほんとうに「馬鹿じゃないのか」と思えてしまうんですね。
観客にありありと情景を想像させてくれるのが上手い噺家だと思いますが、白酒さんはその一人であることは間違いありません。
高熱に襲われて、数日前までひどい体調不良と筋肉痛だったという白酒さん。
「でも、落語家は不思議なもので、高座に座っちゃえばなんとかなるんです。客席が受けてないと、つい笑わせようとして力を入れてしまうのも性ですから。空回りですね」
という枕から、チグハグなやり取りを描く「金明竹」に行く流れ、見事です。
自身が前日に25周年記念落語会を催したことを受けて、
「そういうのはやらないつもりだったんですけど。(四代目三遊亭)金馬師匠なんて芸歴75年ですよ。それに比べたら全然。落語家は死ぬまで現役ですから」
確かに。よく「あと何年は頑張りたい」と聞きますけど、何も自分で寿命や現役年齢を決めつけなくていいんです。
期限を切ったほうがいい目標設定もあるけど、こと「自分がいつまでやれるか」なんて考える必要もないこと。やれる限りやる。
「生涯現役」は万人が言う時代です。