電車内で通話する馬とか鹿とかが不快なのは、それが聞きたくもないアカの他人の会話だから。
BARも通勤電車ほど密でないにせよ、パブリックな場所であり、たとえ仲間内の会話であっても周りが聞いて(というか聞こえてしまうのだ)不快になる内容はNGだ。
個々の思想信条が反映される政治・宗教・スポーツの話題を避けたほうが良いといわれるのは自明。
で、むかーし見た、笑っちゃうくらいお行儀の悪い人について今日は書こう、ネタ不足だしね。
ディテールをどこまで書くか。
一部、情けで端折ろう……。
……カウンター奥に座っていた男1女1の2人。
この二人の関係性は不明だが、男子のほうがやたら声が大きい……というか、居丈高に喋っている。
連れの女子の印象は薄い。
ぼくはカウンター中央の椅子に。
左隣はカップルらしき男女、右隣に男性客、そのまた右隣に彼らは座っている。
今日はいつにも増して活気がある。
と思いきや、右隣の(ぼくより年上であろう)一人男性客が「トーンを抑えて」と彼らにやんわり注意した。
見知らぬ他人に注意するほどの器量・度胸を併せ持ってない身としては、目の端で捉えながらすげえなぁと感心しきり。
ぼくの座る隣人に注意された彼は、すぐに「すみません!」と謝った。
物分かりいいじゃん、良かった良かった。
この店の常連客でもあるらしい彼は、スタッフに1杯お酒を振る舞った。
リラックスして声が大きくなることは誰だってあるさ、良い感じだぁね。
ところが!
隣人がチェックを済ませて出て行ってから、約30分も経ったころだろうか。
彼は声のトーンが再び大きくなり、あろうことか自分を注意したその男性を罵倒し始めた。
隣はもちろん去った後で空席、欠席裁判である。
彼が面白いのは、〇〇さん(マスター)に注意されるならわかる。なぜ見知らぬ奴に説教されなきゃならんのだ、と吠えたこと。
かわいそうに、プライドを挫かれたんだね。
なるほどたしかにごもっとも。
だがキミキミ、実際声デカいよ。
キミはあろうことか「うるさいの根拠はなんだ? 何dB以上はダメと貼り紙でもしておけ」とマスターにイキった。
そんな戯言を聞かされたこちらは、大笑いしたいのを噛み殺すのに必死。
法曹関係の人みたいだったが、もう少し世間を知ったほうが身のためだぜ。
うんうん、連れの女性の眼前で、見ず知らずの他人に鼻を折られたものだから、頭にきたんだよね。
気持ちは分からなくもないが、なんでも数字やロジックで解決しようと思ってはいけない。
暗に反論を封じるために1杯奢るやり方も感心しないね(そうでないのかもしれん。が、結果を見れば、そういう魂胆だったのだと認識せざるを得ない)。
キミのようになんでも明文化、ルール化しようとすれば解決すると考える人は一定数いる。
そういう人は残念ながらBARには不向き。
BARは不文律、アンリトゥンルールで成り立っているところもあるからだ。
ある意味、察知力がなく、常に「俺様が!」「俺は客だ!」みたいなコントローラータイプの人間がいちばんむつかしいかもね。
不文律が理解できないうちは、無難に家飲みに留めておいたほうが、結果キミのメンツも立つのだよ。
傍観者から言わせてもらえば、キミが上述のように振る舞っているうちはBARに早いし、行くべきではないだろう。
そんな飲み方してたら、キミ自身が今に手痛いしっぺ返しを食らう。
そして誰も得しない。
さらに残念なのは、キミの連れの女性だ。
彼女はイキるキミに対して、何ひとつ諌めなかった。
この局面でそれができるのは、もはや一緒にいる人間だけなのに、だ。
カップルか会社の上下関係か、それとも同級生かで対応が可変するって?
知る由もないが、んなものはカンケーない。
この場を収めようともせず、不作為に隣りにいたカノジョ! もう少ししっかりしよう。
BARは居酒屋でもなく、ましてや自分の家でもない。
周りにいる人に配慮できない輩などは、本来BARのみならず酒場の風上にも置けんとぼくは思う。
でも幸いなことに、最近はブログやSNSにアップしてくれているバーテンダーもいる(ありがたいし、実際勉強になる)。
敷居の高いところでは決してなく、むしろ温かいところなのだ、BARって。
自戒しつつ、楽しく飲みたいね。