上野鈴本演芸場令和三年12月中席の企画公演「年の瀬に聴く 芝浜と掛け取り」九日目は、桃月庵白酒さん主任の「芝浜」でした。
饅頭こわい あられ
子褒め 小もん
大神楽曲芸 勝丸
湯屋番 柳枝
贋金の村 馬るこ
垂乳根 扇遊
粋曲 小菊
講談 赤垣源蔵徳利の別れ 琴調
仲入り
奇術 アサダ二世
あくび指南 文菊
紙切り 正楽
芝浜 白酒
白酒さんの「芝浜」は徹底的にお涙頂戴の要素を削ぎ、笑いに転じます。
本寸法の人情噺は似合わない人と思いますが、この「芝浜」にせよ「幾代餅」にせよ、白酒さんは自分にフィットするように改作しています。
ゲラゲラ笑える白酒流「芝浜」のツボは、やたら女房が(腕っぷしも含めて)強い点。
早朝に女房から外に蹴り出され、怒る熊さんに「蹴ってないわよ、大きな手よ!」という場面は、いつ聴いても可笑しい。
「火焔太鼓」にしても「抜け雀」にしても、なぜか白酒さんが演じる女房は言葉責めにしてくるので、妙に印象が残るんですよね。
それでいて嫌味がなくてカラッとしてるのは演者の成せる技かしらん。
この日は琴調さんが赤穂義士伝「赤垣源蔵 徳利の別れ」で、人情面を肩代わりしてくれたので十分。
これ何度か寄席で聴いていますが、何度聴いても切なさが込み上げてきます。
トリの白酒さんと、なんともバランスが取れた日でした。