週末のニッチタイム、東京都美術館で7月2日まで開催されている「ブリューゲル『バベルの塔』展」に行ってきました。
オランダのロッテルダムにあるボイマンス美術館所蔵の16世紀ネーデルランド絵画を展示。奇想天外な絵の数々も魅かれたけれど、なにしろ日曜午後の美術館はかなりの混雑。大半がエッチングによる版画なので、みんな数珠つなぎになって絵を見る順番待ち状態です。待ってられません。ここは速足で鑑賞をすっ飛ばし、お目当ての一点にのみ集中すべく「バベルの塔」を目指しました。
「バベルの塔」は旧約聖書の物語をモチーフに、ピーテル・ブリューゲル1世が描いた絵画。天まで届く塔を建てようとした人々の行いに怒った神が、互いの言語をバラバラにしてしまった。意思疎通できなくなった人々は離散し、塔は完成しなかった、という物語を視覚化したわけですね。この地球の、世界の成り立ちを見ているようで惹かれます。
この「バベルの塔」が今回の展覧会の目玉です。どこにあるのかと思いきや、展示の最後でした。実物の絵画は驚くほど小さく(左右が2人分の肩幅くらい)、とてもじゃないけど、細部の描き込みまで肉眼で確かめられません。ただしこの美術展、混雑の中でも人が止まらないような導線を組んでいて、いいやり方だなと感心しました。じっくり見たい人は、パーティションポールの後ろで見られるようにしたわけです。
それでも細部の識別は難しい。が、最後の最後で藝大が用意した仕掛けが見事でした。別室で見せている5分40秒にわたるCG映像は、「バベルの塔」の建設現場の機械や人々をアニメで動かしてます。さらに出口の手前には、原画の約300%で質感を再現したという拡大複製画が。これを見たことで、ようやく細部が分かりました。この絵画の描き込み。ぼくは神による罰という過酷な側面よりも、むしろ人間の営みの一体感や結束、底力、挑戦といったものを感じたなぁ。
もう一回くらいみたいぞと思ったら、なんとバベルの塔を立体化する試みをやってました。さすがに藝大です。これも行かねば。
細緻な絵といえば、日本画家の山口晃画伯でしょう。ぼくは山口さんの大ファンなのですが、偶然にもBRUTUSが大特集してるではありませんか。同じ細密画でも日本画、それも大和絵の手法です。山口さんについてはまた別の機会に触れます。