東京芸術劇場シアターイーストで上演されたイキウメ『関数ドミノ』(前川知大作・演出)を観に行ってきました(2022年5月28日ソワレ)。
取り柄もないのになんとなく上手く処世してるヤツっているけど、そんなのと自分とを比べるなって話。
思考は現実化するって話。
ある交差点に進入してきた乗用車が、道路を渡る歩行者の数センチ手前で大破。
助手席の同乗者が重傷を負ったが、歩行者は透明な壁に守られたかのように無傷だった。
目撃者の一人は、この事故が「ドミノ」という特別な才能を持った人間の仕業と主張し、それを裏づける出来事が次々に起こる。
ドミノの存在証明というSFサスペンスから、物語は意外な方向に。
ここで言うドミノとは特別な能力を持った人間のことなんだけど、その効力を発する期間(奇跡ともいう)は限られるというのがミソ。
「隣の芝生は青い」とはよく言われますし、組織において「なんであんなヤツの評価が高いんだ(不満)」もよく聞く話。
うまく立ち回る人って誰の周りにもどこにでもいて、切っても切れないんだよね。
だから気にしたってしょうがないんだけど、理屈でわかっていても気にしてしまうのが人のサガ。
で、気づかないまま終わるかもしれないけど、好事も凶事も誰の身にも起こること。
ほら、「ご縁に恵まれた」とか「運がいい」とか言うじゃない?
あれは自分の力でチャンスをつかみ取って、モノにしているんだよ。
意識していないから、単純に運がよかったのだ、と後々になって振り返って自分を納得させている。
ぼくにとって『関数ドミノ』はそういう気づきをくれたわけで、意外なほどに主題は明確シンプル。
だけれども後味はなんとも切ないものでした。
イキウメの『関数ドミノ』は2004年初演で、これが3回目となる再演。
安井順平さんは屈折した役が上手いし、浜田信也さんは浮き世離れしたイケメンぶりで見事に観客をミスリード。
中央が窪んだだけの削ぎ落としたセットで、複数のシチュエーションを違和感なく展開させる美術も素晴らしい。
この再演で本作に初めて触れ、イキウメの神髄に触れた気がします。
とくに若い人に見てほしいな。
【関数ドミノ】2022年版、開幕しました! pic.twitter.com/L2ZSnz5aXW
— イキウメ/カタルシツ (@ikiume_kataru) May 17, 2022