バーボンの後はスコッチへ。リリースからひと月近く経ってようやくアードベッグの限定品「ケルピー」にありつけました。
3杯、例によって「ですぺら」中村元昭店主のコーディネートでぼくも考えつつ、ストンと決めました。ここではいつも飲みながら次を考えるのでなく、最初っから決めてかかるプリフィクスだから、テーマや銘柄で飲み比べできるんです。
この夜はケルピーありきのアードベッグ3杯コース。以下順番に。
ルネッサンス 55.9%
- 香り…ヨード、後半シトラスフルーツ。
- 味…甘くて黒胡椒。白だし。レモネード。
- 総評…バランスに富んだスグレモノ。見事な出来でレギュラーにしてもいいのでは。
アードベッグ復活の狼煙。TENを素の状態で出すと、こうなる。すでに何ロットか出されているようで、もしや6000〜1万本行ってるかも?
カスクストレングスではなく、もしや加水されてる? ほんとにきれいです。「男性的だが、GQっぽい。マッチョなだけでないよね」と中村さん。洒落っ気と遊び心か。
ケルピー 46%
- 香り…一瞬チョコレート、チェリー、あんこ。
- 味…アタックがユニーク。一瞬で消えるのだがエスプレッソもあり、濃い果実感も。後半はゴム。
- 総評…とにかく変。苦味主体。とっつきが良くないものの、飲み慣れるとさほどでもないような。アードベッグの名につられて、おばけ屋敷に迷い込んだ感。
こくあま。焦がした感。普段使わない黒海沿岸のバージンオークとバーボン樽熟成のアードベッグを混ぜた企画モノらしいです。「人を水の中に引き込む悪さをする妖怪」と中村さん。ほんとそんな感じですね。
ダンヴェガン 42.9%
- 香り…薄い。バニラ、シロップ。
- 味…ドライ。今ひとつ特徴に欠ける。植物油。
- 総評…ボトラーズの繰り出すスローカーブな変化球。この中では最もアードベッグっぽくない。が、これはこれであり。
グレンゴイン蒸溜所、タムドゥー蒸溜所を買収したブレンダー兼ボトラーズのイアン・マクロード社の”ダンヴェガン”シリーズ。同社は”チーフタンズ”が有名ですが、”ダンヴェガン”は落とし所のいい、お値段控えめのシリーズだそう。
こちらはオフィシャルでリリースされていない、アードベッグ14年です。オロロソシェリー樽を熟成に用いており、「ドライに寄ってる。夏向きアードベッグ」と中村さん。
70年代アードベッグと今は全然違い、シェリー樽系が多いようです。空気に触れて開くと、やわらかくなる…いいなぁと思いますが、時が経てば経つほど出会うチャンスが無くなっていきます。
それにしても。アードベッグとグレンモーレンジを出すモエ・ヘネシー ルイヴィトン、マーケティングもブランディングも絶妙です。フェノール値が全蒸溜所で最も高い55〜65ppmと言っておきながら、飲み心地のいい甘さ。
「スモーキーなのが好き」と言って、アードベッグ飲んでおけば通っぽいもん。飲み手の自尊心をくすぐりますよね。無理にローバストなオクトモアに行かなくたっていいわけで。「フェノール値高い」と言ってるのは、ある意味売り手の戦略もあるんだろうなと邪推した夜でした。下の写真は比較の一助にいただいたアードベッグTEN。