異色の落語会を企画する、らくご@座の主催『俺のコガネモチ』に行ってきました(2023年11月30日、イイノホール)。
『芝浜』『鰍沢』『文七元結』に続く、シリーズ4回目です。
平林 三遊亭東村山
藁人形 柳家三三
黄金餅 桃月庵白酒
黄金餅池袋編2023 三遊亭白鳥
古典落語『黄金餅』あらすじ
舞台は下谷の山崎町にある裏長屋。ここに住むケチな坊さん、西念が体調不良で伏せっている。
心配して見舞いにきた隣人の金兵衛に、西念は「餡ころ餅が食べたい」と言って、買って来させる。
体良く金兵衛を追い出した西念は、餡ころ餅の餡を出して、自分が貯めた小金を詰め、餅を丸飲み。
途端に苦しみ出して、そのまま息絶えてしまった。
隣からその様子を覗き見ていた金兵衛は、火葬場での骨揚げでカネを奪おうと思いつく。
乞食坊主の西念が主人公の古典落語二席
『藁人形』は、西念がおくまという女郎に騙されて20両もの大金を巻き上げられる話。
『黄金餅』同様ホラータッチの物語で、三三さんの口演で会場は水を打ったような静けさ。
対して白酒さんの『黄金餅』は、金兵衛さんのキャラを面白おかしくデフォルメして笑いを醸します。
白鳥さんの『黄金餅』アレンジ版
この日最も受けたのがトリの白鳥さん。
「どんな噺なのか、白酒のを袖で聴いて思い出した。『黄金餅』ってあんな噺だったんだね!」と笑いを取る白鳥さん。
この噺は修業時代に古今亭志ん朝さんのを生で聴いていたそうで、骨揚げの仕草を真似るなど懐かしんでいました。
『黄金餅池袋編』は原典を現代の池袋に置き換えた、奇想天外なストーリー
ボロアパートに住む売れない新作落語家、Q蔵。池袋演芸場の席亭に自分を使ってくれるよう懇願するも「おまえの噺は客に受けない」と一蹴される。
食うに困るQ蔵は、隣人の老女に食事を無心する。分けてやってもいいがカネを払えとにべもない老女は、韓国伝統の餅菓子トックにカネを入れて飲み込み、そのまま死んでしまう。
老女の正体は北の工作員で、金を遺体ごと国に持ち帰ろうとしたのだ。
Q蔵はアパート住人の中国人スパイの男とともに、闇の組織が営む火葬場で遺体を焼却し、その金をせしめようとするーー。
本家の『黄金餅』は、下谷から麻布の木蓮寺までの道筋を言い立てる「道中づけ」が聴きどころでもあります。
白鳥版も池袋の火葬場に出る場面説明が、ちゃんと道中づけになっていて唸りました。
ストーリーが単なる面白改作ではないのも見事。
Q蔵が悪の道に走ろうとするのを、ある人物が止めるのですが、このくだりは悶々と自我に苦しむ若者への導きとなっていて、青春小説のような趣き。
心温かなエンディングは想定外でした。
まとめ
会場で配られる主催者挨拶に「『藁人形』が『黄金餅』の前段であるという定説はとくにありません」と記載されていますが、目の付けどころはさすが。
ワタシ自身お金大好き人間なので、この会はどうしても行きたかった。さほど頻繁にかかる噺でもないし。
言ってみればホラーでダーティなカネの噺でありながら、終わった後にこれほどジワジワ来るとは。
大満足の会でした。