夢空間主催、恒例の『よってたかって新春らくご’24 21世紀スペシャル寄席ONEDAY』夜の部、にぎにぎしいホール落語会でした(2023年1月20日18時、よみうりホール)。
前半のふたりが、やはりアクセル全開。後半はだいぶ落ち着いた聴き心地。バランス大事ですな。
新聞記事 瀧川はち水鯉
えーっとここは 柳家喬太郎
蝦蟇の油 春風亭一之輔
仲入り
壺算 三遊亭兼好
粗忽の釘 柳家三三
喬太郎&一之輔の自由っぷり
「えーっとここは」は、昨年3月のシアタートップス公演「SWAクリエイティブツアー」でネタ下ろしされた新作。
銀座にあって違和感の生じているという某チェーン店のまくらからSFチックな物語へ。
上司と部下の男性ふたりが、商談に訪れた街に新しいカフェがオープンしていると気づく。
でも、ここは以前来たときとは違う店になっている様子。
パン屋か、本屋か、不動産屋か、なかなか思い出せない。
入った店でアイスコーヒーを注文する二人の会話の隙に入ってきた店主は、二人にあるサービスを施す。
蕎麦からオムライスまで、その中身についてこだわりを熱く語るくだりなどは、いかにもの喬太郎さんで。
続く一之輔さんは正月の忙しさをボヤきまくった後、「何をやろうかな」と思案しつつ、香具師の口上が続く「蝦蟇の油」へ。
久しぶりに聴く噺で、聴いているこちらは虚を突かれました。
ガマの油の効能を流れるような口上で説いた後、会場から沸き起こる拍手。
これに一之輔さんが落語を一時ポーズして礼を述べつつ。
この口上を1作覚える代わりにあと5作は覚えられる――しかも口上の間は笑いがいっさい起きない、ハイリスクローリターンな噺――との言は頷かされました。
兼好&三三は手堅く江戸の風を吹かす
後半の兼好さんは、いつもの朗らかな語り口。
正月に開かれたホテル落語会に来た家族連れの祖父とお孫さんによる、兼好さんを震え上がらせたコワい会話。
いっぽうで、この「よってたかって」会では、たいてい前半ふたりの好き勝手な高座から元に戻してトリにつなげる役目と苦笑する兼好さん。
それにしても「壺算」という噺は苦手だわ、ぼくは絶対だまされるクチですね。
トリは三三さんで「粗忽の釘」。
控えめなまくらの代わりに、サゲを変えたのにはびっくり。
前の3人の噺の小ネタをすべて織り込んだ挙げ句、その噺を取り入れたオチ、初めて見聴きしました。
この後、三三さんはらくごカフェでの行われた能登半島地震のチャリティ落語会「チャリ亭」の高座に駆け付けており、その働き者ぶりに感嘆です。