ふたりとも贔屓なんですけど、贔屓目抜きにして実に良い会でした。
すんごい得した気分。
のっぺらぼう 柳家やなぎ
綿医者 柳家喬太部
寝床 桃月庵白酒
仲入り
喧嘩長屋 桃月庵白酒
錦木検校 柳家喬太郎
2024(令和6)年4月6日14時開演
@関内ホール
綿医者
『擬宝珠』などと同様、喬太郎さんがたまにかける古典の復刻のひとつ。
医者が持病のある男を診察し、即手術。グチョグチョに汚れた内臓や胃を抜くも代わりとなる器官がない。医者はやおら、男の身体に綿を詰める。
楽屋では芸論など出るはずもなく、身体の調子の話で盛り上がるというマクラから。
「気持ちの悪い新作やり始めたと思ってるでしょ? 古典だよーん」と変わらずお茶目。
寝床
義太夫を聴かせたい商家の旦那と、義太夫を聴きたくない長屋の連中との攻防。
一番番頭の繁蔵が集客の成果を詰めてくる旦那に、無理筋な言い訳をするのが笑いのキモ。
なぜ誰も来ないのかを言い淀む繁蔵を、周りの連中が「下手だってはっきり言ってやんなきゃわかんねーんだよ!」と煽ってくるスタイルが白酒さんらしさ。
喧嘩長屋
こちらは白酒さんによる復刻。夫婦ゲンカの仲裁に入った大家や周りの店子、通りかかった人まで巻き込む大乱闘に発展する噺。
白酒さんの本作は、後半に通りがかりの宣教師が仲裁に入るも、却って火に油となる展開が最高に可笑しい。
これは生で一度ぜひ聴きたかった噺で、うれしいうれしい。
錦木検校
古典落語『三味線栗毛』のアレンジ。
父親であり老中の酒井雅楽頭に疎んじられ、大塚の下屋敷で下げられた二男・角三郎。用人の吉兵衛が不便をかけまいと内職して家計を助けていたが、当の角三郎本人は特に気にせず、古書店散策や飲み屋での一杯などで気ままに暮らしていた。
肩こりをほぐすために招き入れた按摩、錦木の療治と話の面白さに惚れ込んだ角三郎は、毎日通うよう指示。
ある日、錦木から「骨格が大名の骨組み」と指摘された角三郎は、「もし大名になったら検校(按摩の一番高い位)にしてやる」と答える。
雨からの帰宅で、濡れたまま寝入ってしまい体調を崩した錦木は、どんどん病が重くなって寝込んでしまう。そのころ角三郎は家督を継ぐことを許され大名に。
それを伝え聞いた錦木は病を押して角三郎改め雅楽頭の屋敷へ。久しぶりの再会を果たした錦木に、雅楽頭は約束通り検校の位を授けるがーー。
心打たれる人情噺。
この噺は社会に出たての若い人に聴かせたい。不遇であっても腐らずやっていると理解者が必ず現れるし、見てくれている人が必ずいる。
クサい? いやいや、「こうあってほしい」世界を描く噺があってもいいでしょ。
落語だけでなく、あらゆるフィクションで。