いやぁ、いいもんを見せていただきました。内幸町のイイノホールで行われた「お暑いさなかに冬噺」(2019年8月11日)という、らくご@座(あっとざ)主催のホール落語会です。雲助さん、喬太郎さん、一之輔さんの3人が一堂に会するのですから当たり前ですが、趣向がピタリとハマりました。素晴らしい会で、来年もまたぜひ開催してほしいところです。
趣向とはタイトルの通りです。冬の季節を舞台とする噺で、暑い夏に涼を呼び込もうというねらい。気が利いていてナイスな企画です。これ、逆に、冬に暑い夏の噺をやっても盛り上がらない。暑い暑いの噺では暖は取れませんからね。
「味噌蔵」春風亭一之輔
「夢金」五街道雲助
休憩
紙切り 林家二楽
「真景累ヶ淵~宗悦殺し」柳家喬太郎
冬場の大火が多かった江戸で、その火事がサゲとなる「味噌蔵」の一之輔さん。雪灯りのなか、悪だくらみの浪人が船宿に入ってきた際に、自分の着物についた雪を払う描写も細かい雲助さん。冬しばりもなんのそので、切りまくった二楽さん。
この会のトリは喬太郎さんです。「もしかして」という微かな期待があったのですが、その予感は的中。期待通りに怪談噺を聴かせてくれました。三遊亭圓朝作「真景累ヶ淵」より「宗悦殺し」です。
「宗悦殺し」は旗本・深見新左衛門が按摩で金貸しの宗悦を斬殺する噺で、「真景累ヶ淵」という壮大な悲劇の第1幕。この事件を機に、新左衛門と宗悦双方の子孫が陥る色欲と因果の物語が続いていきます。
宗悦を殺した後、1年後に訪れた按摩の鍼によってなぜか妻の具合が悪くなり、さらにその1年後にやってきた別の按摩によって新左衛門自身の身にも危機が迫る。按摩は宗悦の亡霊だったのです。その亡霊(幻)を斬ろうとして妻を斬ってしまうくだり。宗悦の幻と妻、そして刀を振り下ろして乱心する新左衛門。3役を交互に演じ分ける喬太郎さんの怪演にくぎ付けになりました。おーー、こわっ。
柳家喬太郎さんの噺というより、その一人芝居を見ているかのような演出。熱狂的なファンが多いのも納得です。喬太郎さんの怪談だけでじっくり聴きたいものです。