星の数ほどある銀座のBAR。
銀座のBARは高級というよりも、本質は「マニアック」なんじゃないかな。
そう認識させられるのがこの本。
酒場の達人として知られる著者が、BARをはじめ大衆居酒屋、蕎麦店など銀座の酒場73軒を紹介……というより飲み歩き(記)した『銀座の酒場を歩く』(太田和彦著/ちくま文庫)です。
銀座のタウン誌『銀座百点』の連載(2006~2008年)が1冊にまとめられています。
老舗からツウな店まで「ここを知らなきゃモグリよ」との著者のひとくさりが聞こえてきそう。
個人的に何度か訪ねたことのあるBARが何軒も掲載されていて、読んでいるとバーテンダーとの軽妙なやり取りの隣りに居合わせたような感覚が。
なかには著者とバーテンダーの会話から「あれは、そういう意味だったのか!」とドキリとするくだりもあり、読んでいてグッとくるものがありました。
なぜ手にしたのか? 読後感は?
筑摩書房本社で行われたイベントで購入した文庫本のうちの1冊で、ようやく積ん読から手に取りました。
加えて、著者の太田和彦さんの文章が好きでしてね。
太田さんは資生堂のデザイナーから独立して、酒場についての著書多数ですが、今は紀行作家のような印象。
テレビでも冠番組を持つほどメディアに登場されていますが、やはり太田さんは文章が魅力的です。
カクテルを飲む際の「ツイー……」とか、酔った感じを格好つけずに表すところとか、そもそもの文章のテンポ感とか。
でも、それぞれのお店への敬愛、リスペクトが伝わってくるのが一番。
確か、来てほしい客をイメージして店はできて、それに沿った客で店がつくられていく、というようなくだりがあって(うろ覚えごめんなさい)、まさにと共感しまくりです。
読後感は、個人的体験のリプライズと憧憬の半々。
背伸びして緊張して銀座のBARの扉を開けたことが、昨日のことのようによみがえります。
自分、BARではいろんなことを目にし、体験しますが、「こうでなくてはいけない」と型にはめすぎではないか。
それは店を司る主(あるじ)が決めることと分かっていながら。
普段は人に期待しないくせに、BARとなると勝手に浮かれて、あるときは愉しく、またあるときは(ごく稀に)肩を落として店を出る。
もぉね、大人になんなきゃと嘆息しましたね。
読んで得たこと
1回2軒の連載。移転もしくは閉店した店は※印で注釈が付与されているのだけど、その多いこと。諸行無常。
とはいえ、当然ながら行ったことのない店が圧倒的に多く、やはり勇気を出してくぐるべきと教えられました。
名人でも緊張するんだなぁと安堵。だって太田さんのようなツワモノですら、初訪問の店に足を踏み入れることをためらう場面があるのだから。
カクテルのテクニックとか知識とかもさることながら、縁のあるゲストや来歴も含めて、店(のスタッフにとって)は銀座を形成する1ページなんだな。
そういうすべてが「マニアック」なのだと、少しだけ理解できた気がします。
巻末にある銀座酒場地図と店データを指でたどりながら、新規開拓といきましょか。
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