外飲みのうち一人飲みが99.9%、その場所はBARが95%の身としては、居合わせたお客さんのなかで、ごくたまぁに「カッコいいな」という人を見かけます。
ルックスとかおしゃれとかではなく(これも含む人もいるけど)、立ち居振る舞いや飲み方のことです。
こういう人が本物だな、と。
BAR使いの通人(ツウ)とは
ぼくから見るに
普段使いしているのがわかり、それでいて、知識や己をひけらかさず、気配すら消している
人です。
まるで忍者のようですが、この場合、存在感がないのではなく、要するに「そこにいるのが自然」なのです。
遭遇した通人
ハードシェイクで知られるバーテンダーのいる銀座の某名店で、カウンター席でずーっと密談風に話し込んでいたスーツ姿の二人の男性。
この人たちがなぜか印象に残っているんです。
目の端で捉えた感じでは仕事の打ち合わせといった様相。アルコールで声が大きくなることはなく、景色と一体になっている。決してシリアスでもなく、しかし適度な緊張感を持って話し込んでいるようでした。
バーテンダーその人のつくるカクテル目当ての客でも賑わっているのですが、一方で場所柄、仕事の延長線上で訪れる人も当然います。
否、領収書を切ってもらうのがフツーだから、むしろ単に美味しい酒を飲むのではなく、社交目的で訪れる人の割合も多いわけです。
おそらく常連であろうこの二人にとって、店は特別なところではない。
ぼくのように、特別視なんかしないんです。緊張もしないし、かと言って服も態度もラフになりすぎない。
己を出さず、酔い過ぎもしない。
要するに「程が良い」のです。こういう人を落語では「様子がいい」と呼びます。
「様子がいい」人を目指す
BARはとかくエチケットやしきたりが言われる、ある意味古風でクローズドの世界。
相性(合う合わない)や雰囲気になじめるかなどの外部要因も多分にある。
そこでスマートに振る舞うのは一朝一夕にできるものではなく、場数に基づく経験が大きいでしょうな。
とはいえ、きれいでない飲み方から脱せないかぎり、場数だけ多くてもしょうもないわけですが。
そうなれるよう、酒場を学校として日々是勉強ですな。
昨日『銀座の酒場を歩く』を読了して、そんなことが脳裏を掠めた次第で。