「なんだか頭がシャキッとするメキシコの蒸留酒」という以外、テキーラのことは全然知りません。というわけで、ウイスキー文化研究所で行われた「テキーラの樽熟成」セミナーに参加してきました。
講師は日本テキーラ協会会長・林生馬さん。林さんは20世紀フォックス社で映画製作をやっていらっしゃったのですね。業界で仕事していたときにテキーラに出合い、気づいたら求道していたという、なんともうらやましい経歴の方です。本当に何が人生を変えるかわかりませんね。
セミナーはテキーラの定義からスタートし、6種類のテキーラをテイスティングする2時間でした。最初のレクチャーでいきなりテキーラに詳しくなったような錯覚が。林さんの講義を振り返ります。
テキーラとは
・メキシコの原産地呼称
お酒の総称としては、原料に由来して「アガベ・スピリッツ」。その中でも、メキシコという国にあるテキーラ村およびその周辺で製造されたものだけが「テキーラ」と呼ぶことができます。品質はテキーラ規制委員会により厳密に管理され、2回蒸留、製品アルコール度数35~55%(メキシコでは38%が多い)などの規格が定められています。
・「100%アガベ」と「ミクスト」がある
テキーラの原料は「アガベ・アスル」というキジカクシ科リュウゼツラン亜科に属する植物。そのアガベを100%使ったものが前者、51%だけ使ったものが後者です。驚いたことに日本で出回っているもののほとんどは後者。ゆえに「メキシコ旅行でテキーラにハマっても、日本に帰国してテキーラを飲んだら”何か違うんだよな”という人がいるのはそういうこと」(林会長)だそう。
ウイスキーでいえばシングルモルトとブレンデッド、日本酒でいえば純米酒と醸造酒といった違いでしょうか。
・単式蒸留器のネックが長い
テキーラはニューポットか、短期熟成で飲まれるのが前提。いい香りを生かすために、蒸留器のネックが長くなったというわけですね。
・ブランコ、レポサド(2ヶ月)、アネホ(1年~)、エクストラアネホ(3年~)という樽熟成
ブランコとはスペイン語で「白」の意味。3年以上も寝かせれば、かなり長期の部類なのだそう。テキーラの樽熟成の歴史は浅く、1970年代からその製品化がはじまっていて、そのノウハウやメカニズムはウイスキーから学んでいるとか。
熟成はオーク樽であれば、新樽・空樽は問われません。辛味・苦味が強い原酒には新樽を用い、甘味中心の原酒にはバーボン空樽を使うのが基本。樽と原酒の相性の問題で、これがひっくり返るとバランスが悪いお酒になってしまうのですね。
・天使の分け前は年間12~17%程度
高いですね(スコッチは2%程度)。これはひとえに暑い気候が理由。10年も熟成させたら樽の中が空っぽになってしまいます。
飲み方はストレートが基本で、ウイスキーのようにトゥワイスアップなどはしないそう。原酒の個性を見るには、水を足さないのが一番。というわけで、この後5種類の100%アガベをテイスティングしました。
(2)に続きます。