東京のクラシックホテルのひとつ『山の上ホテル』は、建物の老朽化に対応すべく2024年から休業しています。
再開時期も見えないなか、隣接する学校法人明治大学がその土地・建物を取得しました。
2031年に創立150周年を迎える同大学の記念事業として再整備。歴史的建造物の現状を維持したまま改修、ホテルも継続させる方向というからアッパレじゃないですか。
今は工事中のフェンスに覆われて建物のてっぺんが姿を見せている程度ですが、建物の威容は素晴らしい。米国の建築家ヴォーリズの功績たるや。
神田駿河台の明治大学中央図書館1Fギャラリーで『山の上ホテルを愛した作家たちー川端康成・三島由紀夫ー』(2025年3月26日〜同年10月30日、入場無料)と題し、作家ゆかりの品々が展示されています。
井上靖、檀一雄、松本清張、吉行淳之介、池波正太郎、山口瞳、小林秀雄、吉田健一、石坂洋次郎、高見順などなど昭和の文士たちが愛し、宿泊したことでも有名な山の上ホテルですが、本展ではなかでも交際の深かった川端と三島に焦点を当てたもの。
同大学が所蔵する「日本近代文学文庫」コレクションから、ふたりの初版本や特別装丁本、直筆署名本などが展示されています。
三島が宿泊時にホテルのパンフレットに寄せた「ねがはくは、ここが有名になりすぎたり、はやりすぎたりしませんやうに。」という直筆メッセージも当然展示されていますが、これはホテル側が頼んだのではなく、三島が自分の意思で書いたものだとか。
原稿執筆のため版元の差配で宿にカンヅメにされた作家が書き上げた原稿を「ページボーイ」が部屋まで取りに行き、本館前駐車場に停めたハイヤーで待機する編集者に届ける……なんてエピソードも。
ページボーイとは要するにホテルのベルボーイか何かかな。大袈裟なと笑っちゃいますが、柚木麻子さんの原作を映画化した『私にふさわしいホテル』(2024、堤幸彦監督)でも出てくるそうで。
山の上ホテルの魅力はあまた語り尽くされ、書き尽くされていますが、歴史が積み上げた雰囲気は行った人ならわかるはず。
こじんまりとしたロビー、手動ドアのエレベーター、赤絨毯などは他のホテルでは見られないし、シティホテルの良くも悪くもシステマティックでビジネスライクなフロントの対応と違い、生身の人が応対してくれる温かさが山の上ホテルには確かにありました(この辺はわかる人とそうでない人で見解は分かれるだろうけど)。
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