アフィリエイト広告を利用しています。

【小説】柚木麻子『BUTTER』:ダークヒロインの掌に踊らされる

柚木麻子『BUTTER』

2007年に起きた首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗がモデルと聞いて、犯行を再現するような小説かと思いきや、第三者的視点から追求していく物語。
男×女や女×女、会社や家庭、親類や友人、上司同僚部下。さまざまな関係性の中で、女が決して表には出さないエゴ・葛藤・生きづらさといった、ヒリつくような感覚を言い得た小説が『BUTTER』(柚木麻子、新潮文庫)です。
英国の大手書店Waterstoneが選ぶ「Waterstones Book of the Year 2024」を日本人として初受賞したほか、海外でもベストセラー街道まっしぐらとか。

週刊誌記者の里佳は、婚活サイトを通じて3人の男から金品を奪い、殺害した罪に問われているカジマナこと梶井真奈子との接見に成功する。ぽっちゃり体形で美女でもない梶井が、なぜ男たちを篭絡できたのか。
その謎に迫ろうとする里佳に、梶井は「バター醤油ご飯を作りなさい」と命ずる。
梶井の独占インタビューを取り付けたい里佳は、梶井の内面に迫るべく、彼女の言われるがまま食生活を追体験する。
だがそれは里佳の職務や外面・内面に変化をもたらすだけでなく、親友の伶子や恋人の誠など、周囲の運命をも変えていく。

さびしい身の上の男たちを弄び、殺害した容疑というセンセーショナルな事件を扱いつつ、美食(それもグルメでなく自分で作る料理が主体)を扱っている点が英国で受けているそう。
確かにバターがふんだんに登場する食の描写は垂涎であるのだけど、気持ちがいいほど女主体で、本作における男はほんの脇役にしかすぎない。
里佳に情報を提供するベテラン記者、里佳の同僚編集者でもある彼氏、伶子の不妊治療に嫌気が差している旦那。
彼らはバターのごとく濃厚なキャラクターの女たちの、添え物程度でしかない。で、それがいいのです。

東京拘置所の面会室。面会にやってくる里佳に対し、教養の浅さを嘲笑しつつ、自分がなぜ「ふくよか」なのか、なぜ男たちから愛されるか、なぜ今の女たちがダメなのかを滔々と語る梶井。
その確固たる男性観と生きざまは、表面では取り繕って颯爽としている里佳や伶子の鎧を脱ぎ取り、ナイフのようにふたりの心を刺す。

梶井が男を下に見る女たちのダメさ加減をあげつらい、里佳を痛罵する場面が複数あるのですが、その言葉だけ捉えるなら真っ当じゃんと思ってしまったのは内緒。
途中で里佳が取り込まれてしまうのでは? とハラハラしながら読み進めたほどで、梶井はさながら『羊たちの沈黙』のレクター博士のようでもありました。
でも真面目な話、己を曲げない梶井というキャラクターの言葉は痛快ですらありました。

BUTTER (新潮文庫) [ 柚木 麻子 ]

価格:1045円
(2025/9/1 22:02時点)
感想(9件)

BUTTER(B) [ ASAKO YUZUKI ]

価格:2516円
(2025/9/1 22:03時点)
感想(0件)

【お一人様5個まで】カルピス(株)無塩バター 450g カルピスバター 食塩不使用_

価格:1699円
(2025/9/1 22:04時点)
感想(610件)

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性