ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』来日公演を観てきました。やっぱり素晴らしい。2018年8月26日まで東急シアターオーブ、横浜、浜松、大阪での公演を経て、同年9月5日~9月9日に再び東京で上演されます。
あるミュージカルのコーラスダンサーのオーディション。男4女4計8人の枠をかけて集まったダンサーたちに、演出家ザックは「履歴書には載っていない話を聞かせてほしい」と語りかける。
米国のカンパニーによるものですので、当然セリフのやり取りは英語です。ステージ両サイドにある縦書き電光掲示板の日本語字幕で観客はセリフを追います。
そのセリフを字幕で追うのが多少ストレスかもしれません。字幕が2行ずつ出てくるので、掛け合いの答えが分かってしまう。字幕ゆえ端折られてしまう。そこが残念だけど、初見の人にも届くようにするにはギリギリの情報量なんでしょうね。戸田奈津子さんの苦労に思いがよぎりました。
四季では現在公演されてませんので、できれば理解を深めるために映画版を見てからご覧になることを勧めます。相当楽しめるはずです。
「きみたちはステージを飾る額縁だ。決して目立ってはならない」。そういう状況の中で、仕事がほしいんだろ?と過度な自己開示を求める演出家ザック。成功体験からトラウマまで、吐き出させる彼はやはり鬼。そしてザック自身も傷を負っているし、彼が行ってきた所業もまた酷い。僕がオーディション参加者なら、当たり障りのない答えでやり過ごすでしょうね。
今回抱いた感想は3つ。LGBTといった言葉が広まる今から40年以上も前に、性的少数者のストーリーを描いていたマイケル・ベネットの進取の気概。車座になってダンサーから聞いたというほんとうの話。それらをもとにしているからこそ、胸にリアルに迫ってくるし、40年以上も現代的な手心を加えずに昔の振付やセリフのままで演じ継がれているのでしょう。もしベネットさんが生きていたら、LGBTが定着しつつある今の世の中について、どんなふうに思うか聞いてみたいです。
もうひとつ、字幕で観ることで、四季版を手がけた故浅利慶太さんによる日本語訳の秀逸さが今さらながら分かりました。整形美女ヴァルが歌う「DANCE:TEN:LOOKS:THREE」という曲の”おっぱいとお尻”という言葉を「ボインとプリン」と表現するなどほんの一部ですが、とにかくなんたる語彙センス!と思わずにいられません。
今回のリバイバルは、初演で小柄なコニーを演じたバーヨーク・リーさんが演出&振付&再構成を手がけてます。なにしろ初演以来40年以上、当然役者も代替わりします。そのリーさんが「第四世代」と呼ぶ今回の役者の中では、マギーを演じた女優(たぶんヴェロニカ・フィアオーニさん)がダントツの歌唱力で素晴らしかった。ラインの左から2番目に立つ女優です。これから観る方、ぜひチェックしてみてください。あ、あと四季版をご覧の方はおなじみでしょうが、ヴァルのファンキックの場面がなぜかカットされてます。なんでだろ?
前回の来日公演や劇団四季版を10回以上見てきた身としては、字幕を見なくてもストーリーが理解できます。が、何度見ても感情が揺さぶられるんですよね。
少数派に対しての深い愛、人の夢や思い、内なる熱い感情。そういった目に見えない大切なものを描いているからこそ、ここまで魅了されるんでしょうね。今回ももう一度チケットを押さえて観に行こうか、真剣に考え中です。