古典から新作、果ては古典改作までバラエティに富んだ噺家が集った会。案の定、演目は古典と新作の半々となりました。
三三さんと市馬さんの高座から、もうそんな季節かと実感。1年早すぎるな。
のめる 柳亭市助
橋場の雪 柳家三三
お直し猫ちゃん 三遊亭白鳥
お仲入り
諜報員メアリー 柳家喬太郎
二番煎じ 柳亭市馬
2025年10月25日18時30分開演 銀座ブロッサム中央会館
会のハイライトというか、ひときわ異彩を放っていたのが白鳥さん。
翌26日に『日本の話芸』(Eテレ)で放送される「お直し猫ちゃん」をノーカットで聴いてほしいと前のめりです。
この演目は古典落語「お直し」からインスピレーションを得た白鳥さんが独自の世界を構築。
「お直し」で夫婦になった亭主と花魁のやり取りを、白鳥さんは老人と猫に置き換えます。
その老人が引退間近の落語家というのも、「老人前座じじ太郎」「黄金餅 池袋編」「落語の仮面」などで噺家を主人公にした白鳥さんならではの作風です。
墓地の墓石の上で鎮座する黒猫と遭遇した落語家ヨシゾウは、なぜか自分の長屋に付いてきた黒猫を飼うことに。
猫又というこの黒猫は文化・文政の時代から300の時を生きており、人間の言葉を話すうえに二股に分かれた尻尾を持つ伝説の持ち主だった。
猫又を使って長屋で猫カフェを開いたヨシゾウだが、客に媚びる様子に嫉妬してしまいーーというあらすじ。
『日本の話芸』収録時、NHKのスタッフに固有名詞や用語的に問題がある箇所をすべてカットされてしまったと嘆きつつ、その場面を嬉々として再現する平常運転。
オリジナルで亭主が「直してもらいなよ」というところを、知ってか知らずか「お直しだよー」とアバウトに変えてしまうあたりが味ですな。
この日の演目、三三さん「橋場の雪」、白鳥さん「お直し猫ちゃん」、喬太郎さん「諜報員メアリー」……いずれも「芝浜」を彷彿させる、寝ている人を起こす場面があったのです。
喬太郎さんはこれに気づき、市馬さんに「芝浜」を演じさせるために自身の演目を決めたんじゃないかな。
市馬さんはしかし乗っからず、好き勝手やっている(ように見える)白鳥さん、喬太郎さんを軽くマクラ代わりにして「二番煎じ」をかけました。
寒い夜の街を見回る謡(うたい)の場面を、市馬さんはゴキゲンに歌い上げます。前にいたふたりを見たら「俺も好きにやらせてもらう」となるのが必定かもね。
