楊貴妃のバースデーにプレゼントする生ライチを数千キロ離れた産地から都の長安まで運べ。
無事に新鮮なライチを届ければ出世間違いなし、しかし失敗は死を意味する。
『長安のライチ』(2025年中国 / 長安的荔枝 The Lychee Road)は、唐の皇帝・玄宗に無理ゲーを押し付けられた下級役人の物語です。
監督のダー・ポンさん(『無名』のキーパーソン役や『熱烈』の監督などマルチなクリエイター)が自ら主演を兼ね、過酷な役を髪振り乱し、汗と涙まみれで演じます。
前半はどうやって長安までの運搬を成功させるかの知恵比べ、後半は駅伝方式という奇想で主人公自ら馬に跨り都を目指す構成です。
クライマックス、長安の城内を主人公が馬で疾駆する場面は、これ以上ないほどドラマティックな絵作り。監督はここから逆算して物語を構築したんだろうなぁ。
非常に評判がいいとのことで「2025東京・中国映画週間」の期間中に鑑賞したのですが、個人的にはけっこうツラい映画でした。
主人公に課せられるミッションがそもそも無体なのに、輪をかけて難問や陰謀が次々に襲いかかる。これらに正面から立ち向かう姿は、見ていてあまりに痛々しい。
後半なんか心労のあまり髪の毛が真っ白になってしまうほど。
なんというか、ここまで過酷でなくともサラリーマンあるあるが身につまされるんですよ。
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』で人気沸騰のテレンス・ラウさんからアンディ・ラウさんまで配役していますが、スターの魅力よりも物語のハードさが上回りましたね。
これを余裕を持って観られるくらいのマインドでありたいと、つくづく。
ふー、疲れた。
2025年10月26日19時 TOHOシネマズ日本橋スクリーン1
