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『人間風車』14年ぶりの再演。怖さよりも、人の愚かさが悲しい鑑賞感。

「人間風車」東京芸術劇場

売れない童話作家が創った童話に、周囲の人間が恐怖のどん底に突き落とされるホラー。後藤ひろひとの快作(怪作?)芝居『人間風車』を観てきました。

コントチックな脱力系の笑いが続く前半、かと思いきや突如、阿鼻叫喚の地獄へと切り替わる後半は心臓をわしづかみに。東京芸術劇場プレイハウスで2017年10月9日まで、その後全国公演を展開。今回の3度目の再演をネタばれなし(難しい!)で振り返ります。

この『人間風車』、初演は後藤さんが関西小劇場の「遊気舎」に1997年に書き下したものでした。G2の演出で2000年と2003年に再演。オリジナルは観ていませんが、2度の再演は両方PARCO劇場で観ました。

物語の中心人物は3人。(  )は過去の再演時のキャストです。主人公の童話作家・平川には成河(生瀬勝久、入江雅人)。平川と意気投合するタレント・アキラにはミムラ(斉藤由貴、永作博美)。平川の童話の世界にのめり込む青年・サムに加藤諒(阿部サダヲ、河原雅彦)。役者陣も今こうして見ると、きちんと演技できる人を起用していますね。

改めてみると……。練りに練られた脚本と、張り巡らされた伏線、非常に巧緻なストーリーです。「あのセリフや態度は、ここにつながるか」という展開の連続。特に後半、戦慄します。月並みな言い方になりますが、セリフを特に聴き洩らさないようにしてください。

周囲の人物の仕打ちに、怒髪天を衝いた主人公・平川。子どもたちの目をキラキラさせたストーリーテラーだった平川が恐怖作家に転じる瞬間と、そこから「終わりの見えない」恐怖のプロセスが、まぁこの作品のホラー的なところなのですが……。

今回はその怖さよりも、ちょっとしたボタンの掛け違いが惨劇に発展してしまうくだりが、悲しくて仕方ありませんでした。むしろ、劇場を出ながら「アンガーマネジメントって大事」と、本筋とは関係のない感想を抱く有様で。

初演の生瀬さん&友人の童話作家を演じた升毅さんの印象が強烈で、今もそれしか思い出せないくらいです。が、今回の座組もなかなかでした。

平川を演じた成河さんは2016年『エリザベート』の暗殺者ルイジ・ルキーニ、2017年の劇団☆新感線『髑髏城の七人ー鳥ー』の天魔王など、すっかり売れっ子ですね。この『人間風車』でも、ルキーニを彷彿させる熱演の場面がありました。ミムラさんは滑舌が良く、しかも上手い。2016年のNHKドラマ『トットてれび』での向田邦子役のハマりぶりに驚かされましたが、この先どんな役をやってくれるでしょう。

加藤諒さんも見事な怪演でした。こういうクセのある役は演じ手が限られているので独壇場は間違いなしなんですよね。むしろ普通の男(どんなや?)を演じた加藤さんを見たい気がします。

2003年の再演でサムを演じた河原雅彦さんの演出は無駄なく、でもキレありでよかったです。最近の芝居には珍しい、幕間なしの2時間半。このジェットコースターおすすめです。

2017年「人間風車」東京芸術劇場プレイハウス

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hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

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