三島由紀夫生誕100年となる2025年は、新潮文庫のフェアをはじめ記念企画が目につきました。
そのしんがりともいえるのが三島の戯曲の舞台化で、私も先日『わが友ヒットラー』を鑑賞したばかり。来年早々には『サド侯爵夫人』を観に行きます。
この2編を収めた戯曲を読了したのですが、『サド侯爵夫人』(1965年、河出書房新社より初版)の登場人物はオールフィメイルで、『わが友ヒットラー』(1968年、新潮社より初版)のそれはオールメンズ。趣向が洒落ています。
新潮文庫の巻末に収録されている自作解題(これまた必読)によると、三島は『サド侯爵夫人』を書き終えた後に対となる作品を書きたかったそうで、フランス革命とナチス革命が時代背景にあるのも劇的です。
『サド侯爵夫人』は倒錯した性的暴力で投獄された小説家サドをかばい続けた妻ルネが、なぜ晩年に突然離婚したのかの謎に迫る野心作。
サドの人物像をルネの姉妹や周辺の貴族夫人、家政婦など、上流階級のエレガントな語り口で複雑な人間の心の移ろいを繙いていきます。
登場人物は6人、場所はパリのモントルイユ夫人(ルネの母親)邸サロンのワンシチュエーション。ただし全3幕それぞれ18世紀後半で月日が経っている設定です。
1965年の紀伊國屋ホール初演はルネを丹阿弥谷津子さんが、モントルイユ夫人を南美江さんが演じているのが時代ですね。
『わが友ヒットラー』はひとことで独裁者となる直前のヒットラーが、旧友を粛清する物語。
成り上がるため、全体主義確立のため、極右と極左を切り捨て、一度は中道政治を装わねばならない。
まだ冷酷になりきれないヒットラーの葛藤が描かれていますが、狂気で名を馳せるその人の人間性の想像(創造)がたくましい。
それにしてもどちらも長ゼリフ、演説(めいた台詞)ありきのカロリー高い戯曲で、役者の負担は相当なもののはず。
実際『わが友ヒットラー』(拙ブログで後日)は俳優が声を枯らすのではと心配になるほどの口角泡の飛ばし合いでもあり、別の意味での緊張感が。
テンポ感や相槌、間(ま)などリアルな会話主体の現在の戯曲からすると、様式美に満ちた三島の戯曲はクラシックなのに新鮮です。
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