今年初の宝塚歌劇はどうしても観たかった『黒蜥蜴』です。宙組さんを生観劇するのは人生初。
いやぁもうめっちゃよかったし、組によって個性がこれほどまでに違うのかと体感させられました。
『黒蜥蜴』は言わずと知れた江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲化したもの。美輪明宏さんのタイトルロールが有名ですね。
高度経済成長期の魔都東京を舞台に展開する黒蜥蜴と明智小五郎の駆け引き、対決。
三島ならではの様式美と耽美に満ちた世界を生田大和先生が宙組で見事に体現させています。たとえばこんな台詞。
黒蜥蜴=女盗賊の正体が判明する明智とのカードゲーム(シーン6)での
明智「凡ゆる犯罪には、或る優雅なものがあります。どんな卑劣な犯罪にも、一種の夢想が付き纏っている」
とか
クライマックス(シーン16)で追い詰められた黒蜥蜴が毒を飲んでから明智の腕の中で呻く
黒蜥蜴「でも私の心の世界では、あなたが泥棒で、私が探偵だったわ。あなたはとっくに盗んでいた。私はあなたの心を探したわ」
とか。
もうね、キザなんてもんじゃない。でもこれがバシッと決まるのが宝塚であり、土ワイの天知茂(とヒロイン役=小川真由美)なわけですよ。
三島の戯曲も読まずにいられません。
大仰さを懸念していましたが、明智を演じる桜木みなとさんが変装も駆使する頭脳明晰な紳士を好演。
95期トップスターのしんがり(今のところ)として堂々たる役者ぶりで、実にすてきです。
しかし最も驚かされたのが、黒蜥蜴を演じる娘役トップスターの春乃さくらさん。
最近は妖精系というかアイドルっぽいタイプの娘役が目につくなか、彼女は大人っぽくて独特の妖艶さがある。
『エリザベート』のようにタイトルロールを娘役が演じるのは相当のプレッシャーかと察しますが、役を完全にものにしていました。
このアダルトは桜木&春乃のコンビだから成立したんだろうな。
さらに特筆すべきは盆回し(装置は松井るみさん)の多用で、役者の出ハケが流麗でスピードもある。
黒蜥蜴が大勢の生き人形(人間の剥製)を彷徨いながら逃亡する場面は、多数の生徒さんをしたがえる宝塚ならではだし、宝塚だからこそできる演出です。
流麗といえば後半の『Diamond IMPULSE(ダイヤモンド インパルス)』もそう。
竹田悠一郎先生の作・演出によるダイナミックなショーで、とにかく展開が速い。
それが宙組の派手派手な個性と相まって、圧倒されます。
宝塚はここ数年は星組中心に観ており(今回、礼真琴さん退団公演以来約1年ぶり)、宙組さんを初めて生で観たのですが。
前方の席で観たことも多少影響しているとはいえ、男役さんは皆、大柄でスタイルがよく、圧もすごいなと。
いい意味でヤカラ感があるのも特徴なのかもしれません。このワイルドさは他組にはないアドバンテージでは。
個人的に2026年はかつてない演劇インプットの年になっており、どんよりした気分で劇場を出ることも多かったのですが。
宝塚の極彩色の舞台を目の当たりにして生き返った気分。観劇後に気分が高揚するって感情が久しぶりによみがえりました。
上演は2026年9月6日まで。
2026年8月16日ソワレ @東京宝塚劇場

