前頁の続き。日本テキーラ協会・林生馬会長によるテキーラの基礎レクチャーの次は、5銘柄のテイスティングです。どれも単一原料「100%アガベ」で、ぼくにとってはすべて初見。どれどれ、どんな感じなのでしょう。
クエルボ レゼルバ・デラ・ファミリア エキストラアネホ 40% NOM1122
「NOM」とは蒸溜所番号を指すそうです。テキーラは蒸溜所にナンバーが割り振られていて、数字だけでどこで製造されたかが分かるのですね。
「1122」は、テ・ロヘーニャ蒸溜所(ハリスコ州バジェス地方テキーラ地区)。名称の「レゼルバ・デラ・ファミリア」とは英語で「ファミリーリザーブ」の意。
クエルボはアサヒビールから正規輸入が始まって、750mlで18,000円というお値段。高い安いもよくわかりません。
熟成樽はアメリカンオーク新樽とフレンチオーク新樽の両方使っているそう。まずひとくち。やっぱりウイスキーとは全然違いますね。樽のスペックを聞いても、やはりテキーラ。南国特有のシャープな甘辛さがあります。
林会長は「バニラ、ドライフルーツ、アガベ由来のリコリスの香り。味は辛く、うっすらと漢方胃腸薬のような苦味も」と解説してくれました。
カサノブレ アネホ 40% NOM1137
コフラディア蒸溜所(ハリスコ州バジェス地方テキーラ地区)のカサノブレ、なんとメキシコ人ギタリスト、カルロス・サンタナのブランドだそうです。
この蒸溜所はOEMのように他社から請負でテキーラを作ってくれる(最低2,000本〜)とのことで、かなりオープンですね。
使用樽はフレンチオーク新樽のみ。タランソ社の1つ20万円もする樽を使っているとかで、「その部分はサンタナのおごりでは?」(林会長)。面白いし、スケールが違いすぎ。シングルモルトウイスキーのカードゥみたいなボトル、価格は7,000〜8,000円とか。
生木の臭さというか、オークっぽい香りを強く感じました。複雑な味もたまりません。「艶やかなミルキーの香り。味はすっきりメロウ、アフターはややスモーキー」と林さん。
ドン・フリオ1942 アネホ 38% NOM1449
ハリスコ州ロスアルトス地方アトトニルコ地区という、舌を噛みそうな名の地にあるプリマヴェーラ蒸溜所。1942年にフリオ・ゴンザレスさんが17歳で興したそうです。「ドン」とはメキシコのコミュニティでリスペクトされてる人のこと。名がそのまま銘柄になったのですね。
ロスアルトス地方はバジェス地方から車で9時間。そのアトトニルコ地区ならではの大型のアガベを原料に使用していることから、プレミアムテキーラの父とも称されるといいます。
香りはバニラ、リコリスなど。味はスムース、ほのかな辛味も、というコメントの後で「日本酒でいう純米大吟醸」という林会長のコメントに「!」となりました。
それは辛さと苦さを抑え、アガベ特有のミルキーな甘さを追求した造りゆえ。熟成にウィーテッドバーボンの空樽を使用したり、熟成庫をミストで加湿して天使の分け前を5%前後に抑えていたりと、製造工程は手が込んでます。テキーラビギナーのぼくには、これが一番美味しく感じられました。
コディゴ1530 ブランコ/レポサド 38% NOM1500
新興ブランド。ハリスコ州バジェス地方アマティタン地区のラス・フンタス蒸溜所です。
こちらなんと、テキーラ好きが高じたCROCKSの創業者によって興されたブランドです。樽の材質はフレンチオークで、ワインはカベルネ・ソーヴィニヨン。ウルトラプレミアムなカリフォルニアワイン「ハーラン・エステート」の空樽を使用するなど、非常に凝った造りをしています。
テイスティングではブランコとレポサドの2種類を試すことができました。ブランコの華やかなアロマに対し、レポサドは非常に生臭く、チーズのような印象。同じセミナーに参加した友人は「メスカルっぽい」と解説していました。
エレンシア・イストリコ エキストラアネホ(ソレラ) 38% NOM1124
最後は29,800円という、日本市場にはほとんど出回っていないプレミアムテキーラ。ハリスコ州グアダラハラ市のテキーラス・デル・セニョール蒸溜所の製造です。
1997年5月27日、EUすべての国がテキーラの原産地呼称を承認し、それを記念してスペイン政府がメキシコ政府に100個ものシェリー空樽を贈ったそうで。
スパニッシュオークのドライオロロソ空樽を使用したことで、シェリー香が支配してます。ぼくはハーブっぽさとスパイスも想起しました。味も薬草っぼくて、シェリー酒の影響も色濃いですね。
テキーラ、味も世界も想像以上に濃厚でした。南国のお酒もハマると大変なことになりそうです。