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きみまろさんの芸はなぜイヤミでないか。

きみまろトランス

中高年のアイドルこと綾小路きみまろさん。独演会にまだ行ったことはありませんが、CDはたまに聴くことがあり、けっこうファンです。きみまろさんの吐く毒、CDでも相当ですから、ライブで聴くとさらにすごいのでしょうね。

「今日おいでくださったほとんどの方が、昭和の時代を生き抜いてきた中高年世代です。太い体で、細々と生きていらっしゃいます」

「美しい人ほど幸せをつかんでない。会場前列のこのへんは幸せでしょう」

「ブスはダイエットなんてしなくていい。ブスがやせるとやつれます」

と観客をあおってます(テキストにすると生々しいなぁ)。

中にはかなり不快感を覚える人もいるでしょうね。でもきみまろさんの漫談を聴きに来る人のほとんどは、きみまろさんがネタにする中高年。観客自身が該当しているわけです。そして、きみまろさんのネタに心当たりがあると、不快どころか「あ、おれ(私)のことだ」と思うようです。

なぜ自分がネタにされると分かっているのに、ライブに足を運び、大笑いするのでしょう。

話し手に愛があるからじゃないかな。

もちろんライブで愛を打ち出すわけはなく、ほの見える感じですね。客はバカじゃない。そういうのって伝わるんですよね。テレビ番組の”笑い”が対照的な典型例です。「いじりではなくいじめ」だし、誰かを貶めてギャハハと蔑み笑う。笑いに見えるようでちっとも笑いじゃない。

きみまろさんとどこが違う? 違うんですよねぇ、これが。きみまろさん自身が中高年であること、きみまろさんが自身をネタにしていること(よく知られているのがヅラネタですね)。そしてもうひとつ。

話しに愛があること。

これですね。相手を嘲笑するのではなく、「老いには逆らえないけど、お互いなんとかやってこうぜ」という感情が込められている気がするんですよね。だから、きみまろさんの話は猛毒でありながら、薬効のごとく服毒可能なんです。

ちなみにウォークマンに入れているのは「きみまろトランス」です。ピストン西沢さんによるトランスが、きみまろ漫談との相乗効果でこれが合うんですよ不思議と。2005年発売ですので時事ネタに時代を感じますが、それでもこの笑いの普遍性は古典落語に通じるものがあります。テイチクさん、実は続編に期待してます。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性