昨日9月2日に行った寄席、鈴本演芸場で小さなお子さんを連れて来ていたご家族がいました。子ども、いいですね。むかしはなんとも思わなかったけど、寄席で子どもの姿を見かけるとなんだかうれしくなるのは、年を取った証か。
最前列に座っていたその女の子、お行儀よくしているんだなこれが。こっちは寄席で子どもが退屈して騒いでも仕方ないよな、という体でいたのですが……まぁ静か、静か。
出てくる芸人さんも、子どもを目にするとうれしいんですよね。漫才のホームランさんは、子どものそっけないリアクションにもめげず(?)奮闘。「目黒のさんま」を披露した金原亭伯楽さんは、まくらで昔の言葉「下肥」を引きながら「お嬢ちゃんは分からないかな。意味はちょっとここではね……。後で教えてもらって」と。紙切りの林家楽一さんもチラチラ目線を。
そういう芸人さんの振る舞い、なんだか見ているこちらがうれしい。子どもに語りかける伯楽さんの、まぁ優しい表情ったら。みんな子どもには優しいんですよね。大人はいつでもその気になれば寄席に行ける。けれど、子どもは親次第でその後寄席に来れるかどうか。子どもは大人以上に一期一会率が高いはず。そらぁ、芸人さんたちは優しくもなるし、力が入るのも当然ではないでしょうか(もちろん、全く気にしない人もいるでしょうけど)。
寄席にわが子を連れて行こうという親の了見も素晴らしいですよね。寄席の体験はオーケストラコンサートや美術館体験と並ぶ、最高の情操教育と思います。
小学3年生くらいまでの児童のほとんどは、落語の意味など分からないでしょう。でも分からなくたっていいのです、いや分からないほうがいいくらい。後で振り返ってみて「あぁ、そういえば昔、落語を見たことがあったな」とうすぼんやりした記憶の中に、微かにでも残っていればいい。
体験は若ければ若いほどいい。あれこれ経験していない脳のフレッシュなうちに。そのときは忘れても、どこかでその風景がフラッシュバックされるときがくる。それが来たとき、興味がわいたら……。それだけですてきなことだと思います。僕自身、高校時代に学校の体育館で歌丸さんの落語を見られたことは、ひそかに自慢だもんね。
この日は後ろのほうにも男の子がいて、その子はストレート松浦さんのジャグリングに「スゲー、スゲー」と感動の声を上げていたっけ。
今のテレビの笑いがスタンダードなんて、ちょっと寂しいぜ。リアルな笑いのある風景、子どもにたくさん機会があったらいいな。落語、それもいろんな芸人が会する寄席は、そのカギを握る気がします。