「そこが儲かる」「今これがキテル」となると、そこにワッと群がる風潮が苦手です。特にコンテンツにおいては、そこに独創性・革新性があればいいのですが、気がつけば皆、同じようなもので溢れてしまう。良く言えば「流行」ってやつですがね。
ここでいうコンテンツは、デジタルとかウェブとか情報通信に限りません。あらゆる素材や商材は、すべてコンテンツなしに成り立たない。古いもの、定番ものでも視点を変えれば、驚きと発見が生まれます。
昨今のウイルス騒ぎで催しの自粛が相次ぐなか、個人的に好きな落語も例外でありません。落語会・独演会が相次いで中止や延期に見舞われています。確実に生で落語が聴けるのは、今や寄席だけです。ここだけは貫かれている。というか、何事もないかのよう。そこがまたいい。
けれども噺家さんにとって寄席だけでは、心もとない。日本全国各地で予定されていた落語会がキャンセルになり、芸を披露する場がなくなり、実入りが減る。大きな痛手です。
先ほどツイッターのTLに流れてきた噺家さんの動画に「!」となりました。そう、YouTubeで落語です。が、この噺家=林家けい木さんは、単に自分の高座をライブ中継するわけではありません。
なんと、周りの噺家さんの「モノマネをしながら」「時報をしゃべる」というわけ。
たとえば、柳家はん治さん。これね、ファンや寄席に良く来ている人でないと分からないと思いますが、すっごく特徴をとらえている。のみならず、もちろん笑えるのです。個人的には他に、柳家喬太郎さん、春風亭一之輔さん、隅田川馬石さんなどがお気に入り。このモノマネは人を不快にするどころか、楽しくさせるというのが大きなポイントです。落語とりわけ古典落語は聴く人によって、不快に感じる話があるかもしれません。YouTubeでそれをやると、リスキーな部分があります。
けい木さんはその点、落語ファンに受け、時報とすることで定期的に自らのチャンネルを訪問してもらえ、あわよくば入口として見てもらうことで落語ファンの裾野を広げようとしているのでは? ツイッターのトップ「固定されたツイート」で投げ銭(祝儀)用の口座番号を記し、告知と連動させているのも見事。その着想と戦略性に唸りました。対象となる周りの噺家さんをディスることはしてないのも(先輩というのもあるかもしれませんが)、とても好感がもてます。
けい木さんのツイッターのTLをたどってみると、二ツ目の噺家有志による #テレワーク落語会 を既に開催していたようです。YouTubeでライブ配信するには、1,000人のチャンネル登録者が必要で、けい木さんは現在766人(2020年3月7日現在)。ぼくもチャンネル登録しました。
真打だろうと二ツ目だろうと、噺家さんにとっても仕事の減少は大打撃。でも、そのピンチを新たな発想で切り拓き、チャンスに変えていく若い人はやはり素晴らしい。これを機に、いろんな二ツ目の噺家をチェックするようにします。