金沢出身の哲学者で、「禅」という日本文化を世界に広めた仏教哲学者・鈴木大拙。金沢21世紀美術館から徒歩10分ほどの場所に、大拙その人をリスペクトする「鈴木大拙館」があります。
ノープランで旅行し、どこに行こうか考えていたところ、タクシーの運転手さんに勧められて足を運んでみることに。鈴木大拙という人に対して全く知識が無かったのですが、なるほど外国人ツーリストに評判(トリップアドバイザー「トラベラーズチョイス 世界の人気観光スポット2015 」博物館・美術館編の日本部門で第8位)という理由がわかりました。
そのように聞くとガヤガヤした雰囲気ではないかと思っていたのですが、全くの真逆。音を立てるのもはばかられるくらい、それはそれは静謐な空間が広がっています。
300円の入館料を払うと、受付の方から、ポケットのあるファイルを渡されます。来館者ははそのファイルに、見学ルート沿いに置かれたプリント類を収めながら進む趣向。
中にある書籍なビデオは自由に見ることができ、海外から来た観光客や日本人のファンと思しき方まで、熱心に本に向かっている姿が印象的でした。
ここが素晴らしいのは、来館者を思索にいざなうかのような空間設計。いわゆるハコモノ的な仰々しさは全くなく、大拙その人を表すかのような、控えめで落ち着いた空間が広がります。
遺品を見て回るのではなく、在りし日の大拙の思想や人柄に触れるかのような、そんな場所です。
それにしても、どこかで見たような風景。それもそのはずで、設計者の谷口吉生はMoMAの新館、GINZA SIX、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、東京国立博物館法隆寺宝物館の設計を手掛けています。トーハクの法隆寺宝物館も、そういえばでっかい池が庭に広がる設計です。
玄関から入って突き当たりの見学ルート(展示空間、学習空間、露地の庭と題されている)は撮影禁止ですが、そちら以外は撮影可能です。でも写真も良いのですが、せっかくだから館内の椅子に腰かけて、庭の池を眺めてみてほしい。
心が落ち着き、立ち去りがたい感覚に襲われるはずです。