トーハクで花見のついでに、藝大美術館(東京藝術大学美術館)で開催初日の『藝大コレクション展 2019』(第1期:~2019年5月6日、第2期:2019年5月14日~6月16日)を観てきました。
地下の展示室の1室だけを使い、約60作品(点数にするともっと多いです)が展示されています。その数約3万件という藝大美術館の所蔵作品のうちの一部を公開するものですが、内容はテーマ性に富み、発見があります。
今回の目玉のひとつ、江戸後期の文人画家・池大雅の代表作の誉れ高い『富士十二景図』全点展示(第1期のみ)、広重や北斎の浮世絵をゆっくり見られます。切手「近代美術シリーズ」でもおなじみの高橋由一『鮭』や、狩野芳崖の『悲母観音』など藝大美術館おなじみの重文も。
高橋由一の代名詞ともいえる『鮭』は緻密で豪胆な油彩ですが、上海使節団として渡った際にスケッチしたという『上海日誌』は3回ほど覗き込んで、端から端まで見ました。これがスケッチかと思う緻密さ、描き込み。新巻鮭とはまた違う、素描の迫力を垣間見る思いでした。
それら名品もさることながら、「イギリスに学んだ画家たち」(通期)という企画展示が良かった。なかでも南薫造の『夜景』という作品が抒情的で、靄に包まれたブルーの川面の景色に、沈思黙考に誘われました。こちらも3回ほど、立ち止まって見入りました。
そう、30分もあれば回れるくらいの規模感なのです。もちろん時間はたっぷりあるに越したことはありませんが。上野公園付近の穴場といえる藝大美術館、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。ほんと、ここ好きな美術館です。
あ、展示室入口にある作品リストとパンフレットはぜひ手に取ってみてください。無料の配布物ながら、展示品の解説や企画のねらいがハイライトで解説されていてお勧めです。