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「大丈夫」はソフト表現の到達点だが、しかし。

最近リアクションとして耳にする「大丈夫」という言葉。個人的にこの言い方に違和感があって、あえて口にしないようにしています。なぜ「大丈夫です」が使われるのか。考えてみたのですが、これ「断る」行為の伝え方を、前向きに変換しているんですね。なんというか、時代の流れ、雰囲気を表しているなぁと思います。

ひと昔前は、飛び込みセールスに対して「要りません」とはっきり断るのが通例でした。「結構です」「間に合ってます」などと答えると、相手に付け入るスキを与えるから云々と。

今はもしかすると情勢が異なるようです。相手に不快感を与えないために、相手にキレられないように、やんわりと言う。

美容院で痒いところないですか「大丈夫です」、ブティックでお手に広げてご試着もどうぞ「大丈夫です」、外食の予約でアレルギーのある食べものはございますか「大丈夫です」。この勢いで、勤務先から給料下げてイイですかと問われても同じ答えしません? 大丈夫です?

同様の表現で耳にするのが「~~してもらっていいですか?」「~~していただけますか?」という言葉。これは本来「~~してください」と言えば済むのですが、命令形のニュアンスが敬遠された末の代替表現なのでしょう。

後々の面倒を避けるために、そして人間関係に波風を立てぬために。「大丈夫」も「~~してもらっていいですか?」も、ソフト表現の一つの到達点。いや、これに留まらず、後々こうした表現が他にも量産されるかもしれません。

個人的に「上から目線」という言い方が今ひとつよく分かりませんが、経験やキャリアがある人が後発の人へ「こうです」と伝えるのにも伝え方があるのでしょうね。教師や専門家はやりづらい世の中ですな。受け手には、教えを乞うという考え方や、未知のことを知る喜びという側面が欠落しているようにも思います。

ビジネス書などで知られるある著者は、セミナーや講演などで「教える」という表現は決して使わないそうです。それすら上から目線であり、マウンティングであるらしい。では、代替表現は何かというと……それはまた別の機会に。

あ、ちなみに聞き方としても「大丈夫」は適切でないですよ。たとえば体調が優れない人を気遣うとき、トラブルに見舞われた人を思いやるとき。「大丈夫ですか?」と聞かれた相手は「大丈夫です」と答えますって。本音は大丈夫でなくとも、余計な心配はかけさせまいと気丈に振る舞うもんですよ。要するにこれ、聞いたほうが「大丈夫です」という答えを無意識に相手に求めた、一種の誘導尋問です。

適切でない用い方もあります。頭痛がつらそうな人に「頭、大丈夫?」と聞いたら引っぱたかれるでしょ。「大丈夫、大丈夫」と言って賞味期限切れのものを食べさせて何かあったら大変。ストレス過多などで自分が追い込まれているとき、「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせてぶっ倒れでもしたらコトです。

こうしてみると、大丈夫って、全然だいじょうぶじゃない。むしろこの表現は多様性の尊重どころか、不寛容さをごまかし、是認するような不気味さを覚えると言ったら言い過ぎか。曖昧表現の向かう先は、コミュニケーションの深掘を求めない今の時代にマッチしたコンビニ表現かもしれないけど、同時に誤解を招きかねない危うさをはらんでいると思うのです。

鋭さや直截な表現を避けた先が、どうか人間関係の劣化となりませんように。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性